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ニュース〜医療の今がわかる

勤務医の疲弊、無力な中医協

■ 調査できないのは病院管理者のせい?
 

 厚労省や支払側委員らは「勤務医の負担軽減」をオウムのように繰り返すが、それはあくまでも診療所の報酬を削って病院に回すための口実として叫んでいるにすぎない。勤務医の負担を本気で軽減しようなんてサラサラ思っていないのだろう。

 10年度改定を終えた後の6月28日、中医協の下部組織「医療機関のコスト調査分科会」(分科会長=田中滋・慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)で、医師の勤務時間を正確に調査するよう求める意見が出たが、厚労省保険局医療課の佐藤敏信課長(当時)は上手にかわした。

 「職種別の給与が把握されていない病院がある。タイムカードなんか全然使っていない。もしかすると、労働基準法違反がバレバレになるのでやらないのかもしれない」と脅しのように語気を強め、調査できないのは病院管理者が悪いという論調で責任転嫁した。病院団体の委員らは苦笑したまま沈黙してしまった。

 分科会終了後、佐藤課長は記者らに向かって笑いながら言った。
 「お医者さんの勤務時間と言ったって、学会の準備をするためにパソコンの画面を眺めているのか、そうではないのか、よく分からないですよね~」

 つまり、待機時間は労働時間ではないと言いたいのだろうか。そうすると、いつも"満員御礼"でにぎわう厚労省の喫煙所にいる職員の労働時間はどう説明すればいいのだろうか。小うるさい大臣がいなくなった影響か、「活気を取り戻した厚労省」という雰囲気である。

 話がちょっとそれたが、佐藤課長は決して「時間外」とか「当直」という言葉を口にせず、「仕事をしているのかサボっているのか不明でしょ」とでも言いたいようだった。


【目次】
 P2 → 当直が負担、「主観的なお答え」
 P3 → 中医協で労基法が議論されない理由
 P4 → 調査できないのは病院管理者のせい?
 P5 → 労働時間の調査は難しい
 P6 → 「医師1人あたりの患者調査」で逃げ切り
 P7 → 「医療崩壊」を阻止できない理由

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