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ニュース〜医療の今がわかる


会場
「札幌医大の細川という。我々もすい臓がんに対するペプチドワクチンの臨床研究を行っている。先ほど山上先生はジェムザールとの併用をやっているとのことだったが、我々はその次によく使われるTS-1との併用で第一相試験を行った。結果は、併用することで有害事象は起きていない。すい臓がんは進行が早いので、できるだけ併用したい。大きな副作用はないので、できれば次の段階へ進みたいと思っている。ここで私は患者さんたちに逆にお尋ねしたいのは、どのようなツールを使って発信すると必要な患者さんが私たちの所に到達できるのだろうか。電話で問い合わせを受けているのだが、早すぎたり遅すぎたり対象外だったりして使えないことも多い」

今井
「どなたかないだろうか。ないか。我々の研究は患者さんと双方向で手作りでやっているものではある。製薬会社が入れば、その辺りのことは手放せるが、そこまでは研究者側にも莫大な手間となる」

会場
「冷静に情報提供しようという姿勢は素晴らしいのだが、朝日新聞記事の与えた影響についても少し議論したい。第一報は誤解を招くような書き方だったということは言えるだろうが、当該記者は臨床試験の問題点を指摘したかったんだということのようだ。これに関して、どう思われるか」

今井
「学会としては困った記事と思って抗議した。今発表したように、がんワクチンに関して非常に大きな精力を費やしてここまで来た。やっと世の中、患者さんの元に届くところなのに、あのようなしかも間違いを含んだ記事を出すというのは、患者さんに対して失礼だと思う。それとは全く次元の異なる制度そのものを論じたいというのなら、別個に論じるべき。制度を論じるために、具体的な事例をねじ曲げて書くという手法は信じられない。臨床試験をすべて治験並みの基準にそろえるべきかどうかと言えば現実的でないと思う。基礎の段階から10年も15年もかけてやっと患者さんの元へ行くところまで進む。途中で色々な規制をかけられれば進むはずがない。国がドーンとお金を出すから全部治験のように報告しろというのは、原理的にはあり得るが、今の何十倍も費用がかかるようになる。それが現実的なのか。原理的には分かるが、現実には患者さんがいて困っている。その辺りをどう折り合いをつけるのかは政治が議論すべき問題だと思うが、政治の役割が十分に働いていなかった。そこができれば話も変わってくるかもしれないが、現実問題として久留米大の伊東先生は積み上げると2メートルも3メートルもなるだけ書類を作って、それでようやく先進医療に持っていった。これがノーマルな姿と言えるのか。研究者にそんなことをさせないでほしい。予算が必要だ。ぜひ患者さんからも声を上げていただいて予算を付けさせるようにしていただけると幸いだ」

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