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がん治療の救世主となるか、「ホウ素中性子捕捉療法」

嘉山理事長(右)と伊丹社長100118.jpg 「世界初、日本初をがんの領域で行う」「今までバラバラだったものを横つなぎにした第一歩の研究成果だ」─。原子炉などがネックとなって進まなかった治療法の確立に向け、国立がん研究センターが動き出した。(新井裕充)

 国立がん研究センター(嘉山孝正理事長)は1月18日、株式会社CICS(本社:東京都江東区、今堀良夫社長)との間で、「ホウ素中性子捕捉療法による新たな先端的がん治療法の確立を目的とした共同研究契約」の調印式を行った。同センターの管理棟1階会議室には50人を超える報道関係者らが集まった。

 冒頭の挨拶で、嘉山理事長は「新生・国立がん研究センターとして国民の健康ために新しい機器・医薬品の開発をするのは使命。従来の標準的医療ではなく先進医療をやる。世界初、日本初をがんの領域で行う」と述べた。

 同センターが取り組むのは、がん細胞のみに限定して放射線を当てる「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)。放射線の一種である「中性子」を発生させるために原子炉が必要であることなどがネックで進まなかったが、同センター内に設置する小型の「加速器」を使うことで、同治療法の弱点を克服できるという。
 
 早ければ2012年度内に臨床試験に着手し、薬事法上の承認を目指す。悪性脳腫瘍に限らず、膵臓がんや肺がんなど「ホウ素が集積する悪性腫瘍」であれば広く対象に加え、「どなたでもPET(検査)で我々が(適応を)確認すればトライアルする」(嘉山理事長)としている。

 「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)について、同センター中央病院の伊丹純・放射線治療科長は「病院設置型、加速器、BNCT、この3つが合わさるとまさに世界初」と説明、「(ホウ素中性子捕捉療法は)アメリカではもう捨てている技術だが、日本では大きな業績を上げている。それを統計学的に、まさに世界水準の先端的ながん治療法を確立して、我が国初の技術として世界の市場に打って出ていく」と抱負を語った。

 嘉山理事長は「今までの国立がん研究センターの歴史的なものも蓄積した上で今日の発表、(契約)締結ができた」と評価。産学官連携の重要性に触れながら、「今までの縦の研究を横に貫いた研究の成果が出てきたとご理解願いたい」と締めくくった。

 詳しくは、2ページ以下を参照。
 

【目次】
 P2 → 「標準的医療ではなく先進医療をやる」 ─ 嘉山理事長
 P3 → 「世界初、日本初をがんの領域で行う」 ─ 嘉山理事長
 P4 → 「病院設置型、加速器、BNCTで世界初」 ─ 伊丹科長
 P5 → 「ホウ素を集積したがん細胞だけ死滅」 ─ 伊丹科長
 P6 → 「病院設置型加速器の最先端として確立したい」 ─ 伊丹科長
 P7 → 「我が国初の技術として世界の市場に」 ─ 伊丹科長
 P8 → 「対象はホウ素が集積する悪性腫瘍」 ─ 伊丹科長
 P9 → 「国立がん研究センター以外ではできない」 ─ 伊丹科長
 P10 → 「バラバラを横つなぎにした第一歩の研究成果」 ─ 嘉山理事長

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