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ニュース〜医療の今がわかる

歯科で進む格差医療、いずれ医科も......?

■ 「経済格差が受診に影響している」 ─ 宇佐美副会長
 

[宇佐美宏・保団連副会長、歯科代表]
 先ほど会長からもお話がありました治療の中断のデータですが、全体では38%ぐらいですが、歯科では51%ぐらい治療中断があるということなんですね。

 今日、お渡しした「月刊・保団連」に東北のデータが出ていますが、東北や福岡では61%も治療中断を経験している医療機関がある。

 やはり、経済格差が受診に影響しているということなので、そういう状況の中で、我々としては「1万人アンケート結果」を見ていただきたいのですが......。(中略)

 調査の方法ですが、全国の保険医協会などが行う街頭宣伝、集会、シンポジウム、健康祭り......(中略)の協力を得て行ったということです。(中略)一般市民のアンケートを取ったのはこれが初めてです。

 当初は1万人を目指しましたが、「そこまでいくかなあ......」という疑問もあったのですが、なんと1万件を超しまして......。(中略)1万人を超える市民からのアンケートはかつてないものです。国民全体の歯科医療に対する意識ともとらえられるのではなかろうか、ということであります。

 (調査結果の)まとめがここ(資料)に書いてあります。1つは、「歯が全身の健康と密接に関連している」と9割以上が回答している。

 次に、歯科医療に関しては9割超が「保険の利く範囲を広げてほしい」(と回答)。ご承知の通り、歯科の場合は混合診療の宝庫でございまして、歯科だけはずっと前からあるわけですが、やはり保険の範囲を広げてほしいという......。今までにない高い数値が出ました。

 それから、歯科の窓口負担に関しては5割超が高いと考えているということで回答されています。また、「治療せずに放置している」との回答が36.6%、約37%ということです。

 結局、「全身の健康と密接に関連している」と思っていながら、受診できない人がいるという実態がここにあるということです。

 それから、治療しない理由に関してもですね、当然、「時間がない」(52.0%)とか「費用が心配」(34.5%)、「治療が苦手」(32.1%)という順番になっている。

 これらが(アンケート)全体の特徴であります。それでは、2ページから見ていきます。集計結果がこのように出ています。(中略)

 (治療をしない理由については)不況と格差社会の拡大から、「時間がない」(が最も多かった)。要するに、経済条件は当然、「時間がない」の中に入ってくると思います。(中略)

 僕の妹が昔、たまたま通産省にバイトに行ったときに、通産省の方はですね......、外務省だ。外務省の方は「これから歯の治療に行ってくるよ」と言って、スッといなくなっちゃうということを聞きました。そういうことが昔は平気でやられていた。たぶん、そういうことが今はできないんではなかろうか。

 (治療をしない理由の)「費用が心配」は、3割の窓口負担が重いというだけではなく、従来から述べられているように、歯科固有の自費診療の存在があるのではなかろうか、負担感が歯科の通院を妨げているのではなかろうかということです。

 ですから、僕が開業したころは「先生、前歯をいくらで治してくれますか」、「保険が利きますか」とか、たくさんありましたけれども......。

 そういうことで、歯科に対する通院の敷居が高いということが今回の調査でも明らかになったのではないかな、ということです。

 それから、(治療をしない理由の)「治療が苦手」とありますが、ご承知のように歯科の場合にはほとんどが外科的なんですね。「切った張った」ということがありますから、やはり治療の内容、技術的な改善も必要ではなかろうかな、と思います。(中略)

 クロス集計の結果もありますが、ここは読んでいただいて......。とりあえず、概要の説明はここで終わりにさせていただきます。以上です。
 

【目次】
 P2 → 「大企業にとって大きな政府、国民にとって小さな政府」 ─ 住江会長
 P3 → 「点数が上がっても患者さんが来ない」 ─ 宇佐美副会長
 P4 → 「経済格差が受診に影響している」 ─ 宇佐美副会長
 P5 → 「医療の高度化が総医療費を上げている」 ─ 竹崎副会長
 P6 → 「当たり前の治療が保険に入っていない」 ─ 杉山理事
 P7 → 「高い点数を抑制する医療政策」 ─ 宇佐美副会長
 P8 → 「患者の窓口負担軽減が第一要求だが......」 ─ 竹崎副会長

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