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ニュース〜医療の今がわかる

「大地震でジャーナリスト、医療者はどう動いたか―被災地からのレポート」 ①

■ 柳川忠廣氏(日本歯科医師会常務理事)②
 

 先ほど「想定外」というお話がございましたが、私ども、大規模災害時の歯科の行動計画を、実は昨年8月に見直したばかりだったんですが......。

 ほとんど......、それに即してやっておりますが、なかなか思うようには行っておりません。(中略) 1つ、考え違い、計画通りに行かなかったのは東北地方、この地域にはあるだろうと思っていたのですが......。

 いわゆる災害時対策の幹事県というのを決めておりまして、幹事県を宮城に置いておりました。幹事県が一番ひどい状況にありますので、特に行政も......。

 私、いろいろやっていてですね、行政の受けたダメージが宮城は最も大きかったという印象を持っております。従いまして、医療の復興も保険の方もですね、保険の復興も立ち遅れたという1つの大きな原因ではないかと思います。

 物資について苦労したのは、現地のガソリン不足です。ガソリンが不足していて、政府調達のトラックをようやく出せたのが......、まあ、少しずつ送ってはいたのですが、本格的にトラック何台かで送れたのが24日でしたから、既に2週間近く経ってからでございます。

 まだその時点でも、宮城や福島市や盛岡市には送れるけれども、その先のデリバリーにつきましては、まだまだガソリンが足りないということで、避難所では「足りない物が多い」ということがよく言われました。現地に行った時にですね......。

 ただ、物資につきましては過去の経験から、まず3月16日の水曜日にメーリングリストを......、現地の行政と歯科医師会......、関係者のメーリングリストをすぐに組みまして、毎日何十回とやり取りをしました。

 どこの避難所で何が足りないのか、まあ全部っていうわけにはいかないですよね。避難所は岩手だけでも300以上ありますから、そういった細かなやり取りを繰り返して物資の調達をいたしました。

 従いまして、「あそこにあれが余ってしまった」というようなことは比較的少なかったようですが、そういうことはずっと現在も継続しております。(中略)

 実際には、照合という作業で現在は苦労しています。(中略) 所持品や着衣などで判別が付く例もあるわけですが、歯科所見というのはかなりこういう場合に有効です。

 最近の例で言いますと、「9.11」のときはDNAが半分ぐらいで、歯科所見が35%。スマトラの例ですが、長期化するとですね、このときは50%以上が歯科所見で確定しているということがございました。
 
 日本の歯科の個人識別......、警察歯科医が活発になったきっかけは、日航機の御巣鷹山の事故でございました。ただ、あのときは飛行機事故ですから、搭乗者の名簿がありました。それから、阪神のときもほとんど建物が......、圧死でしたので、そこの家に誰がいるということは大体分かっていましたから......。

 今回の津波のようなケース......既に茨城でご遺体が上がったりしているわけですから、こういうことは我々としても初めてでございます。(中略)

 地震が何時に起きるかによって大分影響があるわけですが、平時と比べて、義歯を......、この(阪神大震災の)ときは夜中でしたから義歯を外していた方が義歯を忘れて新しく義歯を作らなければいけなかった。

 (スライド)右側は虫歯などです。こういった歯科的な課題が現実には多いということでございます。平時と比べると意外と......、盗難や何かが今回も多くてですね、うがい薬が......、物資では非常にありがたがられた。

 歯ブラシを送ってもですね、まあこれは余談ですが......、実は歯磨き粉もたくさん送りました。「水道が使えない所に何が歯磨きだ」という......。(会場、笑い)

 まあ、そんなようなことをですね、言われることが......、まあ、叱られるわけではないのですが、「現地の状況が分かっていないんじゃないか」ということもございました。

 あるいは保湿剤......、お年寄りはストレスもあるんでしょう、余計に口腔内が乾燥しやすく唾液の分泌も下がるということで、保湿剤なんかがまだ足りないとかっていうことがございました。(中略)

 専門的な歯科医師や歯科衛生士が口腔ケアを行うと、肺炎の発症率が下がると(いう論文がある)。今回も低体温、あるいは肺炎で亡くなられた方が既にいらっしゃるわけで、神戸の例ですが肺炎がいわゆる災害関連死......。ほとんど2か月以内に起こっておりますが、4分の1程度あったと。(中略) 

 今回もそういうこと(誤嚥性肺炎)が起こっている。何とかそれを防ぐために活動しているところでございます。従いまして、そういったトラブルがあったとしても少しずつ防がなきゃいけないという状況でございます。

 現状の課題、いくつかございますが、また後ほどにでも......。ディスカッションのところでお話しできたらと考えております。ご静聴いただきましてありがとうございました。(拍手)

[田辺功氏(医療ジャーナリスト、元朝日新聞編集委員)]
 はい、ありがとうございました。それでは3人目は泰川恵吾先生、よろしくお願いします。泰川先生は鎌倉とですね、それから沖縄県の宮古島を行き来していらっしゃるという先生でございます。よろしくお願いいたします。

 ▼ スライドの準備に手間取っている。

 なかなか......、出ないようですが......。まあ、岩手県の宮古ではなくて沖縄県の宮古島という所に「ドクターゴン診療所」というのがありまして、鎌倉にですね、やはり「ドクターゴン鎌倉診療所」という......。

 何か、1か月とか2週間ごとに言ったり来たりされているという......、何か素敵な先生です。

 (準備)できましたか? はい、よろしくお願いします。
 

【目次】
 P2 → 水巻中正会長(国際医療福祉大学大学院教授)
 P3 → 田辺功氏(医療ジャーナリスト、元朝日新聞編集委員)
 P4 → 加塩信行氏(医師、永生病院・安藤高朗氏代理)①
 P5 → 同②
 P6 → 柳川忠廣氏(日本歯科医師会常務理事)①
 P7 → 同②
 P8 → 泰川恵吾氏(医師、ドクターゴン診療所理事長)①
 P9 → 同②
 P10 → 石井美恵子氏(日本看護協会)①
 P11 → 同②
 P12 → 池谷千尋氏(看護師、キャンナス焼津代表)①
 P13 → 同②

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