文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「大地震でジャーナリスト、医療者はどう動いたか―被災地からのレポート」 ②

■ 前野一雄氏(読売新聞編集委員)②
 

 2週間目に私はいわき市に入りました。(中略) 私どもが目にしたのは、物資以上にマンパワーが足りない、医療のマンパワーが足りないという実態でありました。なぜならば、このいわき市というのは日本で2番目に広い市なんですね。香川県に匹敵するような広さがあるそうで、そこに270のクリニック......、診療所があります。

 それが被災した時には10に減ってしまった。10しか残らなかった。あと全部は流されたり、従業員、スタッフがいなくなったりする形で壊滅状態になっていた。

 じゃ、それに対してどうするのか。私が行った時には、その広い地域に60の避難所がありまして、そこに3500人......、3600人ぐらいの数がいた。そこを回りきれない。とても今の......、現地の通常の医療ではできない。

 で、どう考えたか。「忘れ去られた」という言い方はおかしいんですけれども、確かにそうだった。そこで市の医師会が中心になって、「貧すれば通ず」(ママ)というのではないですけれども、とにかく来る人はみんな......、医療者ですね、全部にお願いする。

 というのは、他の所では例えば「医療支援をしたい」と言うのがあると、「最低でも3泊以上はしてほしいね」って......、長ければ長いほどいいわけですよね。

 でも、来る側からすれば当然自分たちの仕事もあるし、「週末の2日しか空けられない」という部分もある。他の部分も断る部分も......、もう全部いいから来てほしいと。その代わり、そこで市の医師会が完全に割り振りをするという形を取りました。

 多くは(日本医師会の)JMATが来たんですが、JMATだけではなくて、いわゆる個人参加......。個人として医師として来る。看護師として来る。また、中には医学生もいる。それも含めて全部チームを組んで入ったわけであります。

 これ(スライドの写真)が毎日午後5時に開かれるミーティングなんですけれども、話を聴いていて実に素晴らしいんですね。個別的な話......、名前から病状すべてを話している。

 なぜならば、その人たちは2日ないし3日ぐらいしかいられない。次の日にそこにいられるとは限らない。そのために伝達事項をしっかりやっていくという形でした。

 皆さんの生き生きとした顔を見まして、「これは大学病院等で行われているカンファレンスとは随分違うな」というぐらいのものでありました。疲れてはいるけれども、生き生きとしている。

 当然、ここには明日から活動する人間もいる。全国さまざまでした。ここでは、福岡、京都、三重、愛知、富山......、かなりの数が来て、そこで「やれることは何だろうか」という形で......。

 目の前にいる患者、これから悪くなる、なりそうだという人たちを引き継いでいる。本来の医療の在り方の一端を見たような思いがいたします。

 これ(スライド)は福島市内の非常に大規模な......、「あずさ」(ママ)という運動公園という所の......、福島で一番、避難民が集まっている所です。そこには非常に規模が大きく、また支援物資もたくさんあるんです。で、こういう形で......。(スライドは放射線検査をしている写真) 

 当時は被曝線量の問題があって、ボランティアで来ている人たちを医療者がこういう形でチェックしている。この時点では全く意味のないというか......。

 まあ、あの......、原発の従業員以外、そんな基準値を超えるようなものはあり得ないのに、こういうことをしている。むしろ、これをすることによって人材の不足......。

 他の方に持っていってほしいという部分もあるどころか、むしろ一般の不安をかき立てることになるのではないか。これは果たして......。どうしてこういう形で行われたのか非常に疑問を持ちながら......進んだわけでございます。

 あと......、まあこれ(スライド)は......、それ以外の過去のものを出したんですけれども、これまでこういう部分がいろいろあった。しかし、今回に関しては全くそうではない。日本の医療の在り方全体がどう問われているのか?

 ▼ スライドがタイトル画面に戻った。

 医療の在り方の中でも、今回の出来事を我事のようにとらえる者もあるし、そうではない者もある。たぶんこれから......、もちろん医療だけではないでしょうけれども、日本の国の在り方または医療自体のこれからの方向性というのが大きく変わっていくきっかけになるものだというのを私は感じている次第です。終わります。(拍手)


【目次】
 P2 → 前野一雄氏(読売新聞編集委員)①
 P3 → 同②
 P4 → 同③
 P5 → 穴澤鉄男氏(元河北新報記者)①
 P6 → 同②
 P7 → 小出重幸氏(読売新聞編集委員)①
 P8 → 同②
 P9 → 同③

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス