ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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る時間をもっと延ばせないのだろうかということだと思います。このように目的のエネルギー状態にある時間を延ばす方法を、フラットトップ延長運転と呼びます(図2)。 これは、HIMACでは簡単に実現可能でした。なぜなら、「単位時間あたりで厳密な制御」の基準となる時計を止め、加速減速が起きないようにする「クロック停止」という機構が、最初から組み込まれていたからです。 「ビームのテストをする時なんかに、照射がブチブチ切れると面倒なので、早くから使っていました」と野田耕司・放医研重粒子医科学センター物理工学部長は話します。 さて、ビームを人体に照射した場部分を拡大して見ると、図4のように細かな階段状になっています。 この階段のどこかで時計を止めて踊場を作ったら、そのエネルギーのビームも照射に使えるのでないか、と考えついたのがコロンブスの卵で、エネルギーを変えた直後に出てくる不安定なビームは捨ててしまうというひと手間を加えれば、問題なく照射に使えたのです。こうして、多段減速運転(図5)が実現しました。 図3と比べれば、ビームを打てない時間帯が極めて少なくなっていること、一目瞭然ですね。これが「2倍」の正体で、この運転法は2011年に特許として認められています。 こうしてみると、HIMACに「クロック停止」機構が付いていたためにフラットトップ延長運転が行われ、フラットトップ延長運転に慣れていたことが、多段減速運転を思いつくことにつながった、と見ることができます。 このように大きな意味を持ったと考えられる「クロック停止」ですが、他の粒子線施設には組み込まれてい[図4]不要の仕組み合、粒子のエネルギーによって体の奥どこまで入っていくかの飛程が定まります。このため、パターン運転で3次元スキャニング照射をする場合は、必要な飛程ごとに上げて下げてを繰り返すことになります(図3)。 上げたり下げたりしている最中は照射をできませんので、例えば40段階のエネルギー切り替えをするとした場合、上げ下げするだけで約2分かかってしまうことになり、3次元スキャンニング照射をした時に患者さんの拘束時間が大幅に伸びてしまう可能性もありました。 ところで実は、上げ下げの時間エネルギーエネルギーエネルギーエネルギー時間時間時間LOHASMEDICALVIEW5LOHASMEDICAL[図1]パターン運転[図2]フラットトップ延長運転[図3]パターン運転で3次元スキャニング[図5]多段減速運転


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