ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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ハイマック監修/唐澤久美子 放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院 第3治療室長線だけです。似たものとして扱われることの多い陽子線は、生物学的効果比がX線などと大差ないため、治療効果を期待できない種類のがんがあります。 理論上、炭素イオン線より性質の優れた粒子線が存在す回目からの説明をまとめます(前号までの記事は、ロハス・メディカルのWEBサイトで読めます)。炭素イオン線(重粒子線)は、線量分布が良好で、しかも生物学的効果比が高い、という二つの利点を併せ持つため、る可能性はありますが、その照射施設を建設するのに炭素イオン線以上の費用がかかると見込まれること、ここまで炭素イオン線で実績が積み上がっている状況下で、他の粒子線で臨床試験を行うのは倫理的問題を問われかねないことから、少なくともあと何十年か炭素イオン線が、効果の面で最高の放射線であり続けると考えて間違いありません。 何より炭素イオン線の照射自体、どんどん改善されています。放射線医学総合研究所ではHIMACを使った「次世代重粒子線治療システム」として、細いビームで腫瘍の領域を塗りつぶす「三次元スキャニング照射」(2014年12月号参照)を2011年より開始し、患者の周囲360度どこからでも照射できる「回転ガントリー」を2015年より導入予定です。 後者について簡単に説明すると、これまでビームは、ベッドの横からと上からのみ照射されていました。そのため腫瘍の位置や形によっては、治療の途中で体の向きを変える必要があったり、斜めなど不自然な体勢で静止している必要があったりで、患者に苦痛であると同時に位置決めや固定具づくりに時間がかかる原因となっていました。 回転ガントリーが実用化されると、患者はベッドに寝ているだけでよくなり、体勢を変えると一緒に動いてしまう体の中の臓器の位置もほぼ一定になるので、位置決めが早くなる上に照射の精度も上がります。 次世代システムは、治療を精密にするだけでなく、患者1人の治療に要する時間を減らすことにもつながると期待されており、そうなれば1施設で一定期間に治療できる患者の数が増え、より多くの患者が恩恵を受けることになります。日本で発展した高度ながん治療法の世界への普及に夢が広がります。がん治療に用いた場合、正常組織への影響を軽くしながら、ほとんどの種類のがん細胞を確実に叩くことができます。 線量分布か生物学的効果のどちらか片方に優れている放射線はいくつもありますが、両方の利点を持つのは、現段階では炭素イオン最終回より精密により短時間に6LOHASMEDICALVOICE放射線医学総合研究所の重粒子線治療装置HIMACが治療を開始してから6月で20年になりました。重粒子線治療は、当初それほど期待されていたわけではありませんが、世界をリードする画期的なものだと分かってきました。どう凄いのか、基礎からお知らせします。7LOHASMEDICAL


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