120号(2015年9月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年9月号です。


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している人々がかなりいることです。過労死などはなくさねばなりませんが、もっと広い意味で、過労を防ぐことが求められています。 過労とは何かを決めるのはとても難しいですが、働いた後に疲労が回復されないことに深く結びついています。とすれば、対応策は二つ浮かびます。 一つは働く量と質を適正にすることです。何より、過剰に長い労働時間を強いてはいけません。また、絶えず緊張が求められる仕事であれば、その緩和が必要です。いじめやパワハラなどは本来あってが国の働き過ぎは相当なレベルに達しています。KAROSHIという単語が世界に通じてしまうのは、日本人として、とても悲しく感じます。 平成26年度も過労死などは深刻な状況でした。脳・心臓疾患による労災補償の請求は763件で、認定は277件(うち死亡121件)でした。一方、精神障害による労災補償の請求は1456件で、認定は497件(うち未遂を含む自殺99件)に上りました。 注意しなければならないのは、こうした過労死などには至らずとも、過労で四苦八苦整から、休み方の適正化という発想への転換になります。そのインターバルの中で、家族との楽しいやりとりなどによってストレスが癒やされ、何より良好な睡眠が確保されたら、また元気に出勤できるようになるでしょう。 勤務間インターバル制度はとても魅力的ですが、その導入に社会として合意が得られるには、少なくとも二つの課題をクリアしなけばならないでしょう。一つ目は勤務間隔の長さが11時間で充分かです。欧州では、この値を科学的根拠だけでなく、〝政治的合意〟によって設定したそうです。従って、適切な勤務間隔を明らかにするための調査研究が必要になっています。 二つ目の課題は、オフの確保と上質化が過労予防に不可欠であることを、経営陣も組合も労働者も家族も共通して認識することです。時間がかかるかもしれませんが、ここが肝に見えます。第55回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ・上席研究員高橋正也はならないはずですが、もしあったら、職場として撲滅しなければなりません。これらの取り組みはこれまでも実施されてきています。 もう一つの対応策は、疲労回復をできる限り促すことです。これは帰宅後(オフ)にどのように過ごすかに関わります。いわば私生活の問題なので、職場として何らかの取り組みを行ったり、提言するのは躊躇されがちです。そのせいもあって、オフの充実はなおざりにされてきました。 疲労回復を促す第一の条件はそのための時間を確保することです。欧州には、退勤から次の出勤までに最低でも連続11時間を空けなければならないという基準があります。例えば、夜10時に退勤したら、翌朝は9時まで出勤してはならないわけです。 この「勤務間インターバル」という制度は、わが国の過労対策に有効と考えられます。これまでのような働き方の調わ31LOHASMEDICALVOICE


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