ロハス・メディカルvol.126(2016年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年3月号です。


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LOHASMEDICALVIEWれた場合には、国内自給と安全性とは何の関係もなくなります。実際、E型肝炎に関しては輸血で感染、慢性化してしまったという例が最近も何件か報告されています。そして、国内自給だけ堅持していたら安全性が高まるということはあり得ず、どんどん危険性は高くなっていきます。一つの例を挙げます。 2014年夏に国内でデング熱患者が確認されて騒ぎになったのをご記憶の方も多いことでしょう。患者に直近の渡航歴がなかったことから、海外から持ち込まれたウイルスによる二次感染が起きたと考えられ、最終的に約160人が医療機関を受診しました。国立感染症研究所のサイトによれば感染しても5割から8割の人は何の症状も出ないと言われているそうですので、少なく見積もっても300人、多く見積もれば800人が感染したことになります。 このデング熱、既にお隣の中国や台湾では毎年流行が報告されており、熱帯病ではありますが温暖化とグローバル化が進む現況から見て、いずれ国内でもありふれた疾患になることが、ほぼ確実です。①過去に感染し抗体を持っている人 ②蚊に刺されて知らずに感染し血中にウイルスが大量に存在する人(刺されてから7日程度までの間)、が一定の確率で社会に存在するようになります。 さて、デング熱には4種類の血清型が存在します。この4種類、ちょっと不思議な関係にあります。例えば1型にかかった場合、1型に対しては抗体が出来て終生免疫を獲得します。一方で2型・3型・4型に対する感染防御効果は数カ月しか持続せず、その後は抗体がむしろ他の型のウイルス感染を助け重症化してしまう確率が高くなるのです。 ①の人が、②の人由来の輸血用血液製剤を投与されて、そのウイルスの型が違った場合、輸血の原因となった疾病やケガに加えて劇症型デング熱を発症することになり、恐らく生命の危険に直結します。現段階では天文学的に低い確率に過ぎませんが、BSE(狂牛病)の感染確率とそれでも起きた騒ぎのことを思い起こすと、感染者が増えてきた段階で抜本的な対策が必要になることは間違いないと考えられます。 デング熱ほど極端に危険な例でなくとも、熱帯病と思われていたものが、ありふれた病気になるという流れがこのまま進んだ時、国内自給という関門は、安全性の面からは恐らく何の意味も持たなくなります。 国内自給が安全に直結するわけではないと分かりました。安定供給との関係はどうでしょう。 今回、厚労省は化血研に対して110日間の業務停止を命じましたが、血液製剤14品目のうち8品目については代替品が存在しないという理由で出荷を続けさせています。見かけ上の処分が重いだけに、その実態が骨なしということには、業界内でも呆れる声があります。40年間騙され続けたこともあり、厚労省のメンツは丸つぶれです。 メンツ丸つぶれでも厚労省が見かけ倒しの骨なし処分をせざるを得なかったのは、患者の生命を危険にさらすわけにいかないからです。 このことが教えてくれるのは、図の流れの1カ所でも滞ったら、代替するバイパスが充分には存在しないので、患者の生命にすぐ危険が及ぶ、そんな実に危うい構造です。図に出てくる国内の関係各所すべてが順調に何事もなく業務を遂行するという前提でシステムが出来上がっている極めて脆もろい構造なのです。 今回は、たまたま不祥事で工場自体は健在でしたから、本当に安定なのか20


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