ロハス・メディカルvol.135(2016年12月号)

ロハス・メディカル2016年12月号です。リン酸探検隊パン花粉症の舌下免疫療法、睡眠と性差、頭を使って空腹の時はトレーニングを、有酸素運動と血管内皮の機能の関係、カルシウムサプリの心臓への悪影響、予防接種って何なの3、オプジーボの光と影7など


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LOHASMEDICALVIEWルールで最大25%の特例薬価引き下げを行おうとしています。 明らかに起こると予測されたことに対してルールの手当てをしておかず、その結果として年1000億円近く特定メーカーの売上が増えることになったわけで、業務に精通しているはずの当局の人間が誰1人として必要性に気づかなかったというのはいかにも不自然です。知っていて放っておいた理由が何かあるのでないか、裏で何か動いていたものがなかったのかという検証が、いずれ必要でしょう。 ただそこに関しては、必要性に気づかなかったという説明を信じるとしても、もっと不自然なことがあります。 この連載で何度か指摘していますが、実は②の段階(2016年2月)で薬価を算定し直すことのできる「用法用量変化再算定」というルールが、特例でも何でもなく存在します。主たる効能効果について用量の変更があった場合、1日あたり薬価を元のものに揃えるというものです。①の段階で再算定していない以上、オプジーボの主たる効能効果は悪性黒色腫のままのはずで、だったら②で再算定できるはずという理屈になります。それを適用して再算定していれば、引き下げ幅55・6%で米国の希望小売価格並みに納まっていたので、これほどの大騒動は起きなかったと考えられます。 よって今回も、遅ればせながらこのルールを適用するというなら話は分かります。 それなのに、その既存のルールを適用せよとの指摘が中医協委員から出ず、行政の継続性、つまり国の信頼性に傷をつけてまで特別ルールで最大25%の引き下げにしようとするとは、一体どういうことでしょうか。 「専門家」や「有識者」を集めた中医協が、ルールを超越した存在として、ご都合主義でメーカーや医療従事者を振り回す。医療に関して日本は、投資リスクの高い人治の国だと、世界に向けて宣言してしまったようなものです。TPPが始まった後で国益を守れるのか心配されている時に一体何ということをしてくれたのかと思いますし、ドラッグ・ラグを招かないかと心配でなりません。 10月25日の閣議後記者会見で塩崎恭久・厚生労働大臣が「25%というのは今のルールでありますが、それはルール全体ではありませんから、ルール全体をよく見て考えていくということではないでしょうか」と禅問答のような発言をしたそうです。社会の圧力に耐えかねて、用法用量変化再算定を適用する方針になったのかなとも思いますが、さも知恵を絞ったかのように大臣に言わせている場合ではないだろう、と怒りを覚えます。中医協が損ねた国益ツケは患者に向かわないか30オプジーボ承認の流れ年月事象対象疾病用量2014年9月薬価収載悪性黒色腫2MG/KGを3週間に1度①2015年12月適用拡大非小細胞肺がん3MG/KGを2週間に1度※ここで期間あたり用量が2.25倍に増えた②2016年2月用法追加悪性黒色腫3MG/KGを2週間に1度2016年8月適用拡大腎細胞がん3MG/KGを2週間に1度


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