ロハス・メディカルvol.136(2017年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2017年1月号です。


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肥満細胞を刺激します。 つまり、掻くことは痒みを増幅する行為なのです。 ところで中学理科で、皮膚は、温度や痛みの感覚器として学習します。やけどするほどの高温な場合には、熱いと感じる前に(大脳に情報が届く前に)脊髄反射によってとっさに身をよけることが書かれています。また外界の気温の変化を捉え、血管を縮めたり拡げたりして体温を保ったり、病原菌などの異物を認識して身体の中に入れないようにするバリアとしての働きをしたりすることも学習します。このようにある程度は学習する機会があるのですが、痒みについては触れられていません。 そもそも痒みについては最近になって分かってきたことが多いので仕方ないことですが、アトピー性皮膚炎など幼少の頃から治療している人が多いことですし、痒みは日常よく生じることなので、痛みを学習する時に皮膚の痒みについても学習する機会があると助かります。そうすると、誤解もなくなるでしょう。 痛痒いという経験があるためか、痛みと痒みとが同じ神経で脳に伝わっていると勘違いしている人もいるようです。もし、同じ神経ならば、痒みでもとっさの危険回避行動がとれるはずです。でもそういうことは起こりません。高校生物レベルの話になってしまいますが、傷みと痒みを伝える神経の構造は異なり、電車にたとえるなら、痛みは急行で、痒みは各停です。また痛みと痒みが同時に伝わっている場合、痛みの方を脳が強く意識しているだけで、痛みが和らいでくると、今まで感じていなかった痒みを意識するようになり、掻きたいという気持ちが生じます。 皮膚は外側から順に、表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっています。前述したC繊維の末端は、通常は表皮と真皮の境界辺りまで伸びています。しかし、痒みや炎症を繰り返していると表皮の表面近くまで入り込みます。そうなると、外界からの刺激に容易に反応、痒みを感じやすくなります。 さらに最近になって、刺激を受けたC繊維はサブスタンスPの分泌を通して、情報を逆に伝えている可能性のあることも分かりました。川にたとえると、支流の一部で逆流が起き、本来何もない所でも痒みが生じるのです。 痒みについては、まだまだ研究途上で、今回の「末梢性の痒み」とは全くメカニズムや対処方法が異なる、透析をしている人や肝臓病の人が感じる「中枢性の痒み」というものもあります。 いずれにしても痒みは生活の質(QOL)を落とします。イッチ・スクラッチサイクルに陥らないよう気をつけましょう。LOHASMEDICALVIEW毎回、本文と関係のある本をご紹介していきます。斎藤博久著技術評論社2015菊池新著PHP研究所2014もっと知りたい方に知りたい!サイエンスシリーズQ&Aでよくわかるアレルギーのしくみ―アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症、気管支ぜんそくの最新科学―なぜ皮膚はかゆくなるのか5掻きたくなる神経伝達


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