ロハス・メディカルvol.137(2017年2月号)

ロハス・メディカル2017年2月号です。睡眠と免疫の関係、水晶体とオートファジー、体幹トレーニング、血管の傷みが分かる検査、亀田総合病院事件、小松秀樹、がん対策基本法の狙い、オプジーボの光と影9など


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LOHASMEDICALVIEWされるのが普通になったことによって、その各段階の投資にリターンを返すコストが開発成功品に全部乗せられて、最終製品の価格がケタ違いに高くなるという副作用も招いています。 この薬剤高騰にはすべての先進国が苦慮しており、多かれ少なかれ費用対効果で評価して制限をかけるという流れになってきています。 ただ、その結果、回収可能な民間投資総額も限られることになり、流れが停滞する可能性はあります。停滞を防ぐためには、開発のできるだけ後ろまでリターンを必要としない公的資金で進めることも必要になってくるでしょう。 ところが実際に日本で行われていることは、20年遅れの産学連携で米国を追いかけ、しかも公的資金を減らすという時代錯誤です。 国立大学(法人)に対して国から支給される運営費交付金が2004年度から2015年度まで、ほぼ毎年約1%ずつ減らされ続け、総額で年約1500億円も減っていることをご存じでしょうか。授業料は45年前の45倍になりましたが、それでも減収分を補いきれず、各大学は、本体とも言える教員人件費や研究費に手を着けるようになりました。退職した教員の後任を補充しない、研究費を支給しないという大学が増えているようです。ついに2016年10月末、理学部長34人が交付金や教員の削減に反対する声明を発表する事態に至りました。 国立大学から消えた1500億円はバカにならない金額ですが、一方で国民医療費年40兆円から見れば微々たるものです。薬価引き下げ前のオプジーボ1剤だけで、ほぼ同じ年間売上が見込まれていました。創薬の最初に位置する大学を困窮させ、出てくるであろうタネを減らしておいて、最終製品だけに大金を払うというのは、飢饉で将来のタネまで食べてしまって滅びるのに似ていないでしょうか。 そんなことをする一方で、国は産学連携を推進しています。 間野教授は言います。「(他の企業の利用を妨げる)排他的な契約を結ばなければよいのですけれど、知財管理のノウハウを持っている大学は限られますから、不慣れな先生が、分からないまま契約しちゃう危険性はあります」 投資に対するリターンを大きくしたい民間企業は排他的契約を結びたいに決まっています。でも排他的契約があると、競争相手が現れず薬剤費引き下げの力が働きにくくなりますし、契約相手が最後まで開発をやり遂げなかったら、薬そのものすら生まれなくなります。 EML4-ALKの例で言えば、間野教授がファイザーの薬に対して特許権侵害を主張しなかったため、アステラス製薬が開発に失敗しても、特効薬はスンナリ日の目を見られました。 国民全員の財産とも言うべき、国立大学の研究成果が出にくくされ、出ても早くから民間資本に囲い込まれ、薬剤費高騰の原因になる。こんな状況を放置してよいはずがありません。 費用対効果評価で医療費を浮かせて、その分を大学や研究機関に分配、その条件として成果物の特許を排他的に企業へ渡さないこと、臨床試験は日本で行うことを義務づけたら、この辺の問題がすべて解決すると考えているのですが、いかがでしょう?最終価格に切り込んで浮かせた分を研究費に回せ31


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