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をどのようにとるかという課題になります。 ワーク・ライフ・バランスを保つための対策はいくつか提案されています。2015年10月号で紹介したのは、①何時から、何時間くらい働くか、また休暇をいつ取るかを労働者自身が決められるように配慮、②部下のワーク・ライフ・バランスを支援できる上司になるための教育訓練を職場で行うことでした。 IT系の事業所において、この職場対策を施した群(介入群)と、施さず通常通り過ごした群(対照群)とを設けて比べました。対策を実施しが国の働き方を見直そうという動きが、このところ活発になっています。これは喜ばしい流れですが、過労で亡くなるという悲劇を防ぐことだけに終始しては充分ではありません。 働くことはもちろん大切です。それだけでなく、自分の時間を楽しむ、家族と豊かな時間を過ごす、地域の活動を盛り上げるなど、他になすべきことはいくつもあります。このような面も含めて現状が改善されていくのが望ましいでしょう。広い意味では、仕事とそれ以外の生活との調和(ワーク・ライフ・バランス)を調べました。①と②による影響はなかったのに対して、年齢による違いが認められました。 職員を若年層(18∼34歳)、中年層(35∼49歳)、高年層(50∼73歳)に分けると、若年層にのみ介入の効果が現れ、1年後に実施前より、睡眠は1日当たり15分長くなりました。 IT系と介護系とでは仕事の内容や進め方が大きく異なります。特に対人サービスでは顧客(今回は施設利用者)の状況や意向が優先されがちです。そうなると、労働者の勤務時間に対する裁量権を広げる対策は必ずしも有効にならないのかもしれません。 であっても、若年層に対策の効果が認められたのは、彼らが仕事と共に、家庭生活にも慣れて上手にこなしていく世代であったことが考えられます。こうした個別の事情を加味できると、快眠への対策は充実できます。第74回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所産業疫学研究グループ部長高橋正也た1年後に介入群では対照群より、睡眠が1日当たり8分長くなることが客観的な検査から明らかになりました。 同じ研究チームは次に、この対策の効果を高齢者介護施設で検証しました。研究に参加したのは一般の職員(平均39歳)と彼らの上司(平均46歳)で、いずれも9割以上が我女性でした。職員のうち568人が介入群、652人が対照群に割り当てられました。上司については33人が介入群、32人が対照群となりました。 職員、上司どちらも、対策の実施前、実施6カ月後、1年後いずれの時点を見ても、睡眠の客観的また主観的なデータに介入群と対象群の差はありませんでした。つまり、施した対策が睡眠の改善に効果があったとは、全体で見れば言えませんでした。 そこで職員を対象に、①仕事による家庭生活の支障の程度、②子供の有無、③年齢によって結果が変わるかどうか28LOHASMEDICALVOICE