ロハス・メディカルvol.140(2017年5月号)

ロハス・メディカル2017年5月号です。「口から人生を豊かに」2回目は、お手入れの方法です。奈良夏樹氏voice。行動活性化療法。高齢者のポリファーマシー。梅村聡氏と井上清成氏の対談。新専門医って何?ほか。


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LOHASMEDICALVIEWら、そんなものについてちゃんと適正な手続きを確認しましょうみたいな。刑事事件がよく言われるけれど、実際には行政処分の方がおっかないわけだから、そんな所を列挙しておこうと。梅村 31条は、僕も言いたいことがたくさんあります。井上 あまり適正手続きをちゃんと踏んでない。梅村 条文が形骸化してますよね。井上 そうです。結果論、後講釈ですけれどもね、憲法が出来ましたでしょ。それで嬉しくなって、権力と対抗するんだみたいな人たちが、31条以下の条文を何でもかんでも使っちゃった。正直言って筋悪の事件と言うかな、それはいくら何でも無理だよという事件で、格調高い憲法論をぶっちゃうと、どういうことが起きるかと言うと、こういう事案にはこの憲法は使えませんよねと、こういう話になる。そうすると、その抽象化された結果論だけが独り歩きするので、31条以下の刑事手続きの条文が逆の役目になって何でもOKみたいになっちゃった。それが戦後間もなくから長く続いて、今やもう誰も手を着けられないこの状況になっているんです。法律家も裁判官も、ここに問題があることを分かってはいるけど、まあしょうがねえよな、もう確立されちゃったもんね、みたいな感じです。だから憲法改正の議論によって、潮目を変える国民の関心事の第一位とか言われていることを考えると、それについて何の議論もされないまま来ているというのは、法律家的にはおかしいと思います。改憲を議論する時にも、議論に入ってこないというのが本来は変です。入れるとしたら何になるか、考えてみると、結構面白いんですよ。診療の自由みたいな話に仕立ててみたり、それから皆保険制、保険診療受給権みたいな仕立てにしてみたり。梅村 診療の自由は確保しないといけないと思いますよ。学問の自由はあるんだから。井上 それから31条※を行政手続きにも適用する、とか。医療者を巡るものは比較的そういう行政処分とかが多いかというか、もう誰も止められなくなっているのを議論するというのは、大いに意味があるわけです。現実に憲法を変えるかどうかは別にしてね。梅村 ところで、医学部を増やすかどうか議論された時に、一番言われたのが歯医者さんみたいになるぞ、ということで、その次に新しい弁護士制度、司法制度改革のことも、盛んに失敗例として挙げられてました。司法制度改革で弁護士さんが大量に増えたじゃないですか。あれ同業者としては、どうなんですか。井上 お医者さんが偏在しているのか、不足しているのか、私は門外漢だからよく分かりませんけれど、弁護士なんかの経験で考えれば、まず増やしちゃえばいいのにな、と思います。というのが、面白いなと思うんですけど、弁護士の数が実際に増える前に、偏在がなくなったんですね。(つづく)無謀な医療安全推進やれば医療なくなる※憲法31条何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。︱︱この条文が、行政手続きにも、どの程度に適用・準用されるべきかについては意見が分かれている。23


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