ロハス・メディカルvol.140(2017年5月号)

ロハス・メディカル2017年5月号です。「口から人生を豊かに」2回目は、お手入れの方法です。奈良夏樹氏voice。行動活性化療法。高齢者のポリファーマシー。梅村聡氏と井上清成氏の対談。新専門医って何?ほか。


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一般の患者や国民に分かるわけがないですよね。 ですから、もし「患者、国民の希望」を根拠にするのなら、新制度によって、質の高い医師が増え、より安心して受診できるようになるのだ、という説明の仕方をしてもらう必要があります。それなら国民にメリットがあると言われれば納得します。 でも、そう言える新制度なのか考えてみると、正直かなり不安です。 実は、新専門医制度は当初この4月から始まる予定で、学会によるプログラムの一次認定も終わっていました。ところが条件が厳し過ぎて、大学病院や大都市の大病院しかプログラムを組めない領域が続出。現在は各地域の中小病院にまでバラけて専門研修を行っている専攻医が、そうした大病院に集中する可能性が高くなりました。 この集中が「患者、国民の希望」に合致するなら何の問題もなかったのですが、そうではありませんでした。 専門研修を受ける医師は、大病院に在籍する方が中小病院に在籍するより絶対に良い、とは言い切れないのです。 大病院に在籍すれば、指導的医師に恵まれ丁寧に教えてもらえるでしょう。それが向く人もいるに違いありません。ただし裁量の少ない下働きがメインになる覚悟は必要です。一方の中小病院は、専攻医も立派な戦力です。戦力として裁量を持たされながら自発的に修業する方が向いている、というタイプもまた確実に存在します。 これ、一般人に置き換えて、大企業に就職したり公務員になったりしなかったら、一人前の社会人になれないのかと問うてみれば、大病院に専攻医を集中させることのバカらしさに気づくと思います。 まして、数少ない大病院に専攻医を集中させるのは、バカらしいを通り越して、暴挙とすら言えます。今現在、中小病院を受診している患者まで、一握りの大病院に集めてしまうことなど、患者の利便性を考えても、病院の患者対応能力(キャパシティ)を考えても、できるはずなどないからです。 医師が実力を磨くには、患者の診療を実際に担当することが不可欠なのに、専攻医1人あたりの患者数が極めて少なくなって、誰一人として充分な経験を積めない、ということになりかねません。逆に、専攻医が集まらなくなる地域の中小病院では、1人の医師で担当する患者が多くなり過ぎて、医療崩壊する危険があります。 地域医療を崩壊させてしまったら、「患者、国民の希望」もへったくれもありません。 こういう事情から、新専門医制度によって大病院に専攻医が集中することを懸念する実的との見方です。 これに対して、吉村・日本専門医機構理事長の資料には、この3年間の研修が「患者、国民の希望」だと、書いてあります。本当でしょうか? 「在り方検討会」報告書に、そんなことは一言も書いてありません。「専門医に対する期待度」を調査したら「期待する」が9割を超えたのは、上位から順に「疾患(病気)に対する知識」「診断の正確さ」「治療法(薬物療法・手技)への精通」「医師としての能力」「薬剤の知識」「安心感・信頼感がある」「診断の迅速さ」「分かりやすく説明できる力(説明力)」だったという「参考資料」が付いているだけです。 これら各項目は非常に納得できるもので、「質の高い医師」の定義と呼んでも構わないくらいですが、これらの能力を身に着けるためにどれぐらいの期間、どのような研鑽が医師に必要なのかなんて、LOHASMEDICALVIEW28既に1回延期済み


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