ロハス・メディカルvol.142(2017年7月号)

ロハス・メディカル2017年7月号です。「口から人生を豊かに」4回目は、喫煙の悪影響。加えて骨も弱くなるようです。品川女子学院の生徒さんたちによるvoice。梅村聡氏の対談相手は、江崎禎英・経産省ヘルスケア産業課長。保険医療に提供格差ほか。


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 食塩感受性の高血圧では、腎臓でナトリウム(塩分)の排泄を促進し、尿の量を増やす利尿薬が有効です。一方、食塩非感受性の高血圧では、利尿薬では充分な効果を得られず、別のタイプの降圧薬も数多く開発されてきました。ただ、食塩感受性のことが分かってきてみると、心血管疾患リスクのさほど高くない非感受性の高血圧の人まで、躍起になって血圧を下げる必要があるのか疑問も出てきます。 「バルサルタン」(商品名・ディオバン)も食塩非感受性の人に効く薬の1つですが、心血管疾患リスク低下を示すよう医師主導臨床試験データを改ざんして論文発表され、医師向けに宣伝された結果、年間売上が1千億円超の大ヒットに。しかし、その社会的コストに見合った効果が本当にあったのでしょうか。ディオバン事件その悪質さLOHASMEDICALVIEWが必要で、市中の病院では調べてもらうことはできません。血液や尿を使った簡便で信頼性の高い検査が、まだ確立されていないからです。 そこで、高血圧と診断されたら、どちらのタイプか分からない以上、減塩を心がけるべき、となるわけです。食塩過剰は、胃がんなど高血圧以外の疾患リスクでもあり、減塩して損はないからです。 さて、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、欧米の大規模臨床試験を根拠に、「高血圧の予防、治療のためには6G/日未満の食塩摂取量が望ましい」としています。一方、日本人の食塩摂取量は、平均で1日9・7Gと、右の理想値を大きく上回っています。 今からさらに塩を半分近く減らさなければならないのだとしたら、大変な道のりに見えます。 摂取源は、上位から醤油、食塩、そして味噌です。この中で、味噌(味噌汁)は特に減塩のターゲットにされやすく、この数十年、食生活の欧米化とも相まって、味噌の消費量は大きく減少してきました。それでも今なお、日本人の塩分摂取源の約12%は味噌です。 いっそ毎日の味噌汁をやめてしまおう、と短気を起こす人がいるかもしれませんが、早まらないでください。味噌汁は逆に高血圧予防に役立っているかもしれない、という研究報告が相次いでいるのです。 岩手県で、住民998人(平均63・6歳)のデータを解析したところ、味噌汁を摂る頻度が高いほど、家庭高血圧※の割合は少なかったことが報告されています。血圧降下作用のあるカリウムや、動脈硬化を防ぐイソフラボンなどが、味噌に含まれるためと考察されました。 別の研究では、味噌汁を多く摂っている男性は、食塩摂取量は多いけれども、血圧への悪影響が見られませんでした。原因として考察されたのが、魚や野菜も多く摂っていたことでした。魚には動脈硬化を予防するオメガ3不飽和脂肪酸が、野菜にはナトリウム排出作用のあるカリウムが、それぞれ豊富に含まれます。 要するに味噌には、血圧や血管を健康に保つための栄養成分も豊富に含まれており、また、味噌汁を含む献立や食生活は栄養バランスが取れていることが多く、血圧コントロールに適している、ということなのです。 ということで、味噌汁を高血圧の戦犯扱いして食生活から排除するのは、愚かなことですね。たとえ食塩感受性の人でも、減塩のターゲットは他の食材に絞るべきですし、食塩非感受性の人にとって、味噌汁は良いことづくめです。野菜中心の具沢山味噌汁を取り入れた献立、ぜひやってみてください。味噌汁で降圧?※家庭で測定した朝・夜それぞれの血圧の平均値が135/85MMHG以上の場合をさす。 一般に家庭血圧は医療機関での測定値よりも低くなるため、基準値も低く設定されている。4


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