>> P.12
タバコに含まれるニコチンは、依存をひき起こして禁煙を失敗させるだけでなく、骨粗鬆症や骨折のリスクを高める、という話です。ニコチンが体内で連鎖的な反応をひき起こし、最終的に破骨細胞を増やすことになるためです。第25回LOHASMEDICALVIEW喫煙は骨を弱くします。本当です。専任編集委員(米ミシガン大学大学院環境学修士)堀米香奈子タバコの煙骨折の元とは、整形外科分野では経験的によく知られた事実でした」と話します。ただ「様々な研究が行われてきたものの、タバコの何が骨に影響しているのか不明なままだったのです」。 さて、骨には、体を支えるという役割の他に、カルシウムの体内貯蔵庫という役割もあります(ロハス・メディカル2015年5月号「骨粗鬆症」特集参照。WEBで電子書籍を読めます)。血中のカ煙が、肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のリスクを高めることは、よく知られています。真っ先に煙にさらされる肺の病気ですから、驚きはありませんよね。でも、煙を浴びるわけでもない骨に悪影響があると聞いたら、眉にツバしませんか? この関係、専門家には意外でも何でもないようです。慶應義塾大学整形外科の宮本健史特任准教授は「元々、喫煙が骨粗鬆症の誘因となり、骨折のリスクを高めていることや、骨折の治癒を遅らせるこルシウムイオンは、筋肉や神経の信号伝達に不可欠です。なので、血中のカルシウムイオン濃度が高過ぎれば骨に蓄え、低過ぎたら骨から放出して、と骨自身の新陳代謝(リモデリング)に合わせて調整し、血中濃度を一定に保つのです。 骨からカルシウムを放出する(つまり骨を壊す)際に働くのが、破骨細胞です。 今年3月、宮本特任准教授たちのマウス実験で、ニコチンによって破骨細胞が増えやすくなる、と確かめられました。 依存性があるニコチンは、禁煙失敗の原因として有名です。これまでも骨の健康を害しているのでは、と疑われてきました。しかし、「例えば、試験管内の破骨細胞にニコチンを直接振りかけても、特段の影響は見られなかったのです」と宮本特任准教授。 実は、ニコチンが直接骨に働くのではなく、白血球の一種を刺激し、下流で連鎖的に問題が起きていました。刺激喫意外なメカニズム破骨細胞が増殖今回のお話は…12