ロハス・メディカルvol.135(2016年12月号)

ロハス・メディカル2016年12月号です。リン酸探検隊パン花粉症の舌下免疫療法、睡眠と性差、頭を使って空腹の時はトレーニングを、有酸素運動と血管内皮の機能の関係、カルシウムサプリの心臓への悪影響、予防接種って何なの3、オプジーボの光と影7など


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LOHASMEDICALVIEWそんな構図が拡大再生産されていくというのでは、健康な人が高い薬剤費を負担することは正当化されません。 癌学会で野田座長から説明された問題意識に通じるものがあります。 薬の価格を下げよという社会の圧力が高まっていることに関して、やはり癌学会のパネルディスカッションで話をした厚生労働省の森和彦大臣官房審議官(医薬担当)は、「開発側のインセンティブが失われてしまうと(中略)またドラッグ・ラグの問題が起きるような、そういう心配もあります。(中略)散々苦労して10年近くかけてドラッグ・ラグ、審査ラグをなくすように血の出るような思いをしてやってきたのが逆行しちゃうというのは勘弁してほしい」と述べました。 たしかに、価格面で払う側の論理が突出すると、ドラッグ・ラグを招いて、「手の届く」が成立しなくなる可能性はあります。 ただし、やはり保団連の調査によれば、オプジーボを除いたとしても、日本の薬価は欧州各国より相当に高いです(図)。欧州各国で、それなりに薬が供給されているのだとしたら、ドラッグ・ラグが起きるのは単純に価格だけが問題ではないことになります。 今ドラッグ・ラグが起きるとしたら、森審議官が強調したように審査当局のせいではなく、メーカーが開発から申請という一連の流れを日本で後回しにするためと考えられます。 日本での臨床試験(開発)が欧米に比べて極めて少ない、つまり後回しにされていることは連載の3回目でも説明しました。もっとメーカーが日本でも開発を行うようにしないと、これから確実にドラッグ・ラグは起きてきます。 では、今後メーカーが日本で積極的に開発しようと考えるだろうかという観点から今回のオプジーボ騒動を眺めると、中央社会保険医療協議会(中医協)とその事務局である厚生労働省がしたことは、極めて罪深く、国益を大きく損ねたと言わざるを得ません。 次頁の表は、オプジーボの承認の流れです。 10月末時点の情勢としては、①の段階(2015年12月)で患者数の増大に合わせて薬価を算定し直さなかったことが様々な場で問題視され、それを受けて中医協では後出し高額薬剤費をコストではなく投資と捉えられるか※日本の売上上位100位までの薬剤で、米国、ドイツ、フランス、イギリスのうち3ヵ国以上の国で薬価が判明した薬剤77品目の幾何平均値全国保健医団体連合会「薬価の国際比較調査結果」(2011年12月22日)不透明・非合理な日本イギリスフランスドイツ日本米国10011416822228905010015020025030029イギリスを100とした各国の相対薬価(2010年患者購入価格)


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