ロハス・メディカルvol.137(2017年2月号)

ロハス・メディカル2017年2月号です。睡眠と免疫の関係、水晶体とオートファジー、体幹トレーニング、血管の傷みが分かる検査、亀田総合病院事件、小松秀樹、がん対策基本法の狙い、オプジーボの光と影9など


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LOHASMEDICALVIEW緒に薬剤を開発してくるということをしない限りは、恐らくドラッグ・ラグは解消できないのかなと」と同意、他の委員から反論はありませんでした。 ヒトでの安全性を確かめるフェイズ1試験は小規模で、実施されるのは多くても数カ国です。そこに関与していれば、確かにその後の臨床試験もパスされないでしょう。ただし関与するとは具体的にどういうことかと考えてみると、確実なのはフェイズ1試験を日本で行うことしかありません。 臨床試験を行うには、当然のことながら薬のタネや苗が必要です。 近年は、製薬企業がタネ探しから手掛けて自前で創薬をやり抜くより、大学や公的研究機関から生まれたタネを、ベンチャーが苗に育て、仕上げや収穫だけ製薬企業、というように段階ごとに分業されることが増えています。フェイズ1をベンチャーが実施することも少なくありません。 で、フェイズ1試験は、タネを産んだ大学やベンチャーにとって最も都合の良い場所で行われるのが当然です。日本以外の国で育った苗が、日本でフェイズ1に進むなどということは、ちょっと考えられないことです。 こう考えてみると、何のことはない、日本から良い薬のタネや苗を産み出すことが、ドラッグ・ラグ回避の一番近道ということになります。そして、そのような日本発の新薬が世界中で売れれば、前回ご紹介した年2兆5千億円にも上る医薬品の輸入超過が少しは緩和され、国家財政を助け、国民皆保険の破綻回避に貢献することでしょう。 ちなみに本庶佑京都大学特任教授の研究室でタネが生まれたオプジーボは、小野薬品工業だけでは開発が難しかったため、日本・韓国・台湾の3国を除くと米国のブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が販売権を持っています。惜しい話です。 また、間野博行東京大学教授(国立がん研究センター研究所長を兼務)は、2007年に肺がんの原因となる融合遺伝子EML4-ALK(2012年4月号特集参照。WEBで電子書籍を読めます)を発見し特許も取りました。しかし、その遺伝子が作る原因タンパクに作用する物質クリゾチニブ(薬品名・ザーコリ)を既に持っていた米国のファイザーは、フェイズ1試験を日本ではなく韓国で行っていた一方、間野教授がライセンスを供与したアステラス製薬は開発に失敗したという残念な話もあります。 それまでにないコンセプトの薬で、タネから収穫まで一貫して日本が主導して一番乗りしたという例は、まだないのです。逆に、それを達成できたら、夢は広がります。 前述した創薬の分業は、米国で1980年に通称バイ・ドール法が成立、連邦政府の資金提供を受けて行われた研究開発の成果物でも大学や個人が特許権を持てることになり、そのタネを育てるベンチャー企業が次々に誕生して、大きく進みました。 今後しばらく新薬の主流を占めると考えられているバイオ医薬品で、米国が世界のトップを走っているのは、この時の政策転換で産学連携が大きく進んだためと言えます。 一方で開発の早期から、タネを持っている会社ごと売買タネから収穫までずっと関与ならラグも高騰も起きにくい産学連携は叩き売り30


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