ロハス・メディカルvol.140(2017年5月号)

ロハス・メディカル2017年5月号です。「口から人生を豊かに」2回目は、お手入れの方法です。奈良夏樹氏voice。行動活性化療法。高齢者のポリファーマシー。梅村聡氏と井上清成氏の対談。新専門医って何?ほか。


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LOHASMEDICALVIEW 頼みの免疫が負けそう、あるいは免疫に何か問題がある、しかも相手の病原体はウイルスなどではなく、細菌の可能性が高いということになって、初めて抗生物質を使う意味が出てきます。 もちろん薬ですから、飲んだら大抵は何らかの副作用があります。薬代もかかります。健康保険を使うはずなので、最低でもその7割は社会全体で負担することになります。前回説明した耐性菌の問題もあります。 効くか効かないか分からず、必要かどうかも分からず、副作用はほぼ間違いなくあるし、お金はかかって、社会に迷惑かもしれない。そんなものを「とりあえず」飲むって、根本的におかしいですよね。 ですから医師は、抗生物質を使うことのマイナスを、メリットが上回ると考えられる時にだけ処方することになっています。なっています、と奥歯に物が挟まったような表現になるのは、現在必ずしもそうなっておらず、世界から顰ひんしゅく蹙を買っているためです。昨年の伊勢志摩サミットでも議題になりました。 このメリットとデメリットの比較検討を素人がやるのは、絶対にムリです。そこは医師に任せましょう。 敵の正体がきちんと分かっていて、放っておいても免疫だけでは勝てない可能性が高いなら、抗生物質は極めて頼りになる武器です。一方で放っておいたら治るようなものに抗生物質を使うのは、世界全体から見ると迷惑な話です。 医師が処方しないのに、患者の方から「抗生物質を出してください」と要求するのは厳禁です。逆に抗生物質を処方された場合に、なぜメリットが上回ると考えたのか医師に対して質問してみるのは、そのやりとりを通じて、良い医師を見極め信頼関係を深めることにつながるかもしれません。17


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