ロハス・メディカルvol.141(2017年6月号)

ロハス・メディカル2017年6月号です。「口から人生を豊かに」3回目は、歯痛の原因です。武井典子氏voice。新連載「健康情報しらべ隊」スタート。分煙では受動喫煙を防げない。梅村聡氏と井上清成氏の対談。記者が当事者になって気づいたことほか。


>> P.21

問われれば、思いつかなかったと答えます。 今回改めて、当事者が必要な情報を得る、特にトラブル発生を未然に防ぐための情報を得る、それがとても難しいということに気づきました。 私は医療介護福祉分野の記者をずっとしてきましたし、社会福祉士の資格も持っています。周産期医療を題材に『救児の人々』という本を書いたこともあるので、妊娠出産に関する医療情報についても、一般の妊婦さんより知っていると思っていました。 ところが、妊娠して以降「え、全然知らんかった。そんな大事なこと、誰か教えてよ」と思うことに、しばしば出くわしました。 人の身に起こるトラブルはニュースのタネですから、記者は、どんな問題がどこに発生しそうかと常にアンテナを張っています。何しろ仕事なので、時間や体力を情報探しに集中させられます。 しかし、一人の生活する妊婦、つまりトラブルに襲われるかもしれない当事者になってみると、やらなければいけ思い、社会福祉士やヘルパーの資格を取ってコムスンに転職しました。 すると、制度がどうなっているか、全く分からなくなりました。正確に書くと、目の前の仕事に手一杯で、情報を得ようという気が起こらなくなったのです。制度の変化についての情報は、休憩所にファイリングされて置かれていましたけれど、短い休憩時間は少しでも休みたくて、見る気がしませんでした。他のスタッフも、ほとんど手に取っていませんでした。 記者時代は、自分の記事を読んでもらえば現場の人たちも情報を得られるぐらいに思っていましたけれど、全然違う、メディア側の思い上がりだったと知ったわけです。 ある情報が有用かどうか、受け手側の状況によって変わると思います。 特に、トラブルを未然に防ないことは他にも山ほどあって、まだ起きてもいないトラブルを未然に防ぐような情報を探すことの優先順位は、とても低くなります。 結果として、記者として偉そうなことを書いておきながら、様々なトラブルに見舞われてしまったわけです。 ふと、以前にも同じような体験をしたことがあったな、と思い出しました。 私は大学卒業直後、福祉新聞社という福祉業界専門紙の記者をしていました。 霞が関や永田町に常に出入りして、福祉や介護に関する政策の動向の最前線を見ていました。当時、特に介護については、介護職がどこまで医療行為に関わってもよいかとか、資格の内容など、頻繁に制度が変わっていました。その全体像を、ほぼ把握していると思っていました。 その後、現場を知りたいとLOHASMEDICALVIEW記者と当事者の違い目の前で手一杯問題を考えない21


<< | < | > | >>