ロハス・メディカルvol.111(2014年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2014年12月号です。


>> P.7

ハイマック高いものです。放射線抵抗性の腫瘍と呼ばれます。また、がん細胞自体は放射線抵抗性でなくとも、血管から遠くて組織の酸素濃度が低い場合は活性酸素による傷害(間接効果)をあまり見込めないため、効きづらいというのも前回説んに対する放射線治療の最大のメリットは、手術せずに済む低侵襲性です。低侵襲だからといって根治をめざせないわけではなく、頭や頸部など腫瘍の部位や状態によっては、真っ先に検討されるようなこともあります。明しました。 このような放射線の効きづらいがんに対しては、外科手術や抗がん剤と組み合わせるなど工夫が行われていますが、せっかくのメリットである低侵襲性も損なわれます。 ここまで注釈なく書いてきた抵抗性が課題となる放射線、実はX線や陽子線などの低LET放射線だけです。 対して高LET放射線の場合、細胞に与える影響は直接効果がほとんどで、細胞に回復の余地を与えません。このため、放射線抵抗性を克服できると考えられています。 我が国でこれまで、がん治療の外部照射に用いられたことのある高LET放射線は、中性子線と炭素イオン線です。うち中性子線はHIMACの前に放射線医学総合研究所(放医研)で精力的に研究され、悪性黒色腫など放射線抵抗性のがんにも効果を示しましたが、線量分布が良くないため晩発がんなどの副作用を制御しきれませんでした。 これに対して線量分布の良好な炭素イオン線は、これまで20年の経験から、放射線抵抗性のがんによく効くうえに、副作用も少ないことが分かってきています。 つまり、同様に線量分布の良好な陽子線では効果を期待できないような放射線抵抗性の腫瘍に対しても、炭素イオン線なら副作用少なく使えるのです。最強最良の治療法と評価される理由です。 ところで6回目から今回まで読んで、炭素イオン線の効果が生体による修復の影響をほとんど受けないのだったら、正常細胞とがん細胞の回復力の差を利用する分割照射の意味はあるのだろうか、と思わなかったでしょうか? 実際、炭素イオン線では1回あたりの線量を増やして照射回数を減らす試みが一貫して進められており、ある種の肺がんなどは照射1回で済むようになってきています。治療を受ける際に入院を必要としない場合が多く、QOL(生活の質)を維持しやすいのも魅力です。 ただ残念ながら、がん細胞の種類によっては、効きづらいものもあります。腺がんや肉腫、悪性黒色腫などで、放射線で受ける傷の回復力が正常細胞よりも第9回放射線抵抗性と闘うがLOHASMEDICALVOICE放射線医学総合研究所の重粒子線治療装置HIMACが治療を開始してから6月で20年になりました。重粒子線治療は、当初それほど期待されていたわけではありませんが、世界をリードする画期的なものだと分かってきました。どう凄いのか、基礎からお知らせします。7LOHASMEDICAL


<< | < | > | >>