ロハス・メディカルvol.111(2014年12月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2014年12月号です。


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んに対する放射線治療の最大のメリットは、LOHASMEDICALVIEWLOHASMEDICALVIEWし終えないと、塗り絵の途中に紙が動くようなもので、ムラを避けることはできません。また照射全体を見た時に、これまで数分で済んでいた拘束時間が大幅に増えたら、ベッドの上でじっとしていなければならない患者にとってはむしろ苦痛が大きくなってしまう可能性もあります。 これらの問題を避けるためどうすればよいのか、スキャニング法開発着手の前にシミュレーションしてみたところ、スキャニング照射のスピードを100倍にできたら大丈夫だろうということになったそうです。 そして単に照射のスピードを上げるだけでなく、狙い通りの位置に狙い通りの量のビームが届いているかモニターして、何かあったらすぐ止められるようにしておかないと、その昔に懸念された「命に関わるような事故」が現実のものになってしまいます。 実現するのが、どれほど大変なことだったか、お分かりいただけると思います。 放医研は、メーカーの東芝と共同で努力を積み上げ、この難しい目標に到達しました。「コンピューターやエレクトロニクスの進歩があったからこそ、先輩たちが自信を持てなかったことも実現できたと思っています」と古川チームリーダー。 なお100倍は、ビームの走査スピードを10倍に上げ、治療計画を工夫して5倍効率良く、シンクロトロンの運転方法の変更でビームを打てる時間を2倍にすることの組み合わせで達成されました。 このうち前二つの「10倍」と「5倍」は、理詰めの技術進歩によってもたらされたものでしたが、最後の「2倍」は建設当初に全く別の目的で組み込まれたアイデアから生まれたものでした。面白いので次回ご紹介します。 今回の更新は少しずつ進められ、来春ぐらいに一通りの完成形になります。この年末には、呼吸同期の方法が進化する予定です。 これまでは体表面にマーカーを貼って目印にしていました。しかし、臓器の位置は心拍などの影響も受けるため、必ずしも体表の動きと一致して定まるわけではないということが分かってきています。また、実はビームの通り道にどのような組織があるかによって飛程(塗りつぶす深さ)が伸び縮みするので、通り道に骨などはない方が望ましいです。 新しい方法では、X線で毎秒15回ずつ撮影して、目標臓器が狙った位置にあることを確認して照射するようになります。これにより、誤差がさらに減ります。 そこまで精密になったら、今でも手術と同等の治療成績が一層上がるのではないかと期待したくなるのは人情ですが、辻井博彦・放医研フェローは「拡大照射でも線量分布は十分に良く、照射部位からがんが再発することはほとんどないので、治せないのは照射野外にがん細胞があった場合。これまで見えなかったがん細胞を見つけるような診断法の進歩や、遠隔転移してしまったがんに使える治療法との組み合わせがないと、そう簡単には良くならないんじゃないかな」と話します。 この限界は手術の場合と全く同じで、しかし副作用の軽さに関しては、手術との差をさらに広げることになりそうです。呼吸同期も進化6LOHASMEDICAL


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