ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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府広報によれば、2010年度現在で65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と推定されています。 認知症そのものについては、本誌でも2012年から13年にかけて特集していたので、詳しくはそれを参考にしてください(ロハス・メディカルのサイトで全部読めます)。今回は、脳に着目します。 私たちの脳は成長するにつれ、知識や体験と共に感情を伴った思い出を蓄積していきます。そして必要な時に神経のネットワークを使って蓄積された情報を取り出し、情報同士を組み合わせて物事を考え判断・処理をしていきます。 脳も細胞の集合体ですから、体と同様に老化します。記憶力が落ち、なかなか覚えられなかったり、すぐに思い出せなかったり、物忘れしたりが増えます。そうなっても長年の経験を活かした判断力や処いったことが全く分からなくなります。映画のフィルムでたとえるなら、ある1コマの画像を見ているだけです。いくつかのコマを断片的に記憶していたとしても、断片を正しくつなぎ合わせられません。 人間の脳には、知識に関わる部分の他に感情を司る部分があります。 そして知識に関する能力が失われても、感情の方は最後理力は健在で、人生の先輩としてご高齢の方から教わることがたくさんあります。 しかし認知症は、老化の正常な物忘れと異なり、記憶していたこと自体を覚えていません。また、周囲で起こっている現実を正しく認識できません。自分がなぜ今ここにいるのか、これから何をしようとしていたのか、とまで健在です。状況がよく分からないながらも、ピンチだ困ったという感情はあります。このため、断片的なコマから、何とか次のコマを考え、早く対処しようとします。機能の低下した脳が、低下したなりに全力を使って辻褄合わせのストーリーを産み出し取り繕うので、周囲の人には到底理解できないような言動となってしまうのです。 例えばお店のレジで財布がなかった場合、皆さんは何を考えますか? ①財布を忘れたのかも、②財布を落としたのかも、③途中で取られたのかも、④財布がないのだから今日は買うのをやめよう、⑤どうしても欲しいからお店に取り置きをお願いしよう、など、原因や対処方法について、いくつもの考えが自然と湧き出てきます。その考えを自分でまとめ、お店の人と会話し、その場を自然に解決させることができます。「レジで財布がない」というピンチに自分政LOHASMEDICALVIEW脈略のない記憶取り繕う脳薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰吉田のりまき都道府県が設置する教科書センター一覧は、文部科学省のサイトに掲載されています。HTTP://WWW.MEXT.GO.JP/A_MENU/SHOTOU/KYOUKASHO/CENTER.HTM教科書をご覧になりたい方へ第25回脳の仕組みとその老いを学ぼう2ROBUSTHEALTH


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