ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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の身が置かれても、周囲の人とコミュニケーションしながら、社会的に許容範囲内の行動をとることができるのです。 一方、認知症の人の場合は、「財布を出してくださいと言われている」「自分は財布を持っていない」「お店の人が険しい顔だ」ということだけ分かる世界にいます。そして「怒られて嫌だな」「この人は怖い」「早く立ち去りたい」という感情が生まれています。 何とかこの状況から脱出しようと焦り、少ない記憶の断片をつなぎ始めます。例えば、自分は何も悪くないのだから、誰か悪い人がいたなら辻褄が合うことになり、誰かが取ったと言います。あるいは、さっさとお店を出れば怒られなくて済むと考えて、そのまま商品を持ち帰ってしまいます。当人はこれで立派に解決したと思っているので、店を出てから追いかけられ怒られる理由が分かりません。 お店側からすればたまったものではないでしょうが、このような言動で局所的には辻褄がきちんと合うわけで、人間の脳の底力が垣間見られます。認知症になった脳であっても、壊れていないネットワークを使ってなんとか処理しようと最後まで諦めず、もがいているのです。 そもそも脳の機能について、多くの大人は学習する機会がありませんでした。 脳の研究がだいぶ進んだ現在の義務教育でも学習の機会は少ないままです。中学理科で中枢神経として脳と脊髄を学びます。熱い物を触った時に熱いと感じる前に、手を離すといった反射についての記述が多々ありますが、情動や記憶といった大脳の働きを十分に学習するものではありません。また中学保健の教科書で脳の機能を取り上げていることもありますが、そこに「脳も老いる」という視点はありません。 いちいち脳の機能のことまで考えて認知症の方に対応するわけにはいかないでしょうが、取り繕いによるおかしな言動は、人間の脳が底力を振り絞って頑張った結果だということを認識していれば、その人の脳は今どのような断片を拾ってきたのだろうかとその人の脳に寄り添うきっかけになり、対応のヒントが生まれてくることもあります。 そういう意味でも、脳の仕組みや脳の老いについて学ぶことは大切だと思います。LOHASMEDICALVIEW脳の機能と老いを学ぶ 毎回、本文と関係のある絵本をご紹介していきます。 発刊が古くても解説がわかりやすい本がたくさんあります。また図書館にしかない本もご紹介いたしますので、ぜひお近くの図書館にお出かけください。服部万里子監修岩﨑書店 2013年小坂直樹文 水上みのり絵幻冬舎ルネッサンス 2012年ジャーク・ドレーセン作アンヌ・ベスターダイン絵朝日学生新聞社 2011年大人にもオススメ子ども向け絵本もっと知りたい!お年よりのこと2長生きってすばらしいおばあちゃんのノートおもいでをなくしたおばあちゃん3ROBUSTHEALTH


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