ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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った一方で、考えなければいけない問題も出てきています。最近は少なくなりましたが、電車やバスの中での電話には閉口します。また、歩行中のスマートフォン、いわゆる「歩きスマホ」は行き来を妨げますし、人にぶつかってトラブルにもなります。 それより深刻なのは、運転している時に携帯電話を使うことです。わが国では法律で禁止されているにもかかわらず、携帯電話運転を街中でもよく見ます。 運転中に電話を受けるのもそうですが、かけるとなると電話番号を打ち込こむために、帯電話やスマートフォンなど、コミュニケーションの道具はまさに日進月歩です。かつて、電話は一家に1台で、子供は親の許可がないとかけられませんでした。まして、電話を外に持ち出せて使えるようになるとは思いもよりませんでした。 このような小さな端末は私たちの生活を大きく変えました。一言で言えば、あらゆる面で便利になりました。仕事の関係者、家族、友人との情報交換はもちろん、音楽や動画、ショッピングまでも楽しめるようになりました。 生活がこのように豊かになはずです。にもかかわらず、なぜ運転中に携帯電話をかけたり、文章を送ったりするのでしょうか。理由の一つは仕事の都合で、そうせざるを得なかったのかもしれません。 もう一つの理由として、前回ご紹介したように、運転する前に睡眠が充分にとれていなかった可能性があります。しっかり眠っていないと、運転中に脇見が増えるなど、余計なことに気を取られがちになります。「スマホ運転」はその現れとも言えるでしょう。 また、スマートフォンでのやりとりは、実は、脳を目覚めさせる効果があります。つまり、眠気を払うための望ましくない手段になってしまっているとも考えられます。 睡眠が足りない状態では善悪の判断が甘くなることも関係しているかもしれません。運転中、この1件の電話だけなら、この1通のメッセージだけなら、と思った瞬間に、人生が悲劇に変わります。第47回たかはし・まさや●1990年東京学芸大学教育学部卒業。以来、仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。独立行政法人労働安全衛生総合研究所作業条件適応研究グループ・上席研究員高橋正也一瞬でも携帯電話の方を見なければなりません。当然、視線は前方に向けられません。米国の調査では、運転中に携帯電話をかけると、事故の確率は2・5倍ほど高くなることが示されています。 最近の携帯電話、特にスマートフォン型は短い文章のやりとりを運転中でもできます。しかし、そのせいで、事故が4倍以上起こりやすくなるというデータもあります。 運転以外の動作を運転中に行うことの影響が米国で調べられました。その結果によれば、例えば、カーラジオを特定のチャンネルを合わせるの要した時間は約1分でした。それに対して、「これから買い物に行きます」のような短いメッセージを書いて送るのにはおよそ2分かかりました。その上、車線のはみ出しもカーラジオ条件より30%以上多くなりました。 前を見ない運転がいかに危ないかは、誰しも知っている携LOHASMEDICALLOHASMEDICALVOICE


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