ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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おおにし・むつこ●医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて基礎研究に従事。LOHASMEDICALVIEWる化学反応が起き、アクリルアミドが生成されます。困ったことに、メイラード反応は、独特の良い香りと味を生んでもいます。 フライドポテトやポテトチップスの独特の味と引き換えに、アクリルアミドも摂取してしまうということになります。 含まれる還元糖やアスパラギンを調理前に完全に除去することは、あまり現実的ではないと考えられています。どちらの成分も植物の成長と成熟に不可欠なためです。ただ最近、アスパラギナーゼという天然の酵素で処理してアスパラギンを減らす方法も出てきています。技術の発展に期待したいところです。 アクリルアミドを減らすには、どうしたらよいのでしょう。 論文では、ジャガイモの貯蔵・保管方法についても言及しています。ジャガイモを8度以下の低温で保管すると、デンプンが還元糖に変化します。つまり、常温に置いておいたジャガイモより低温で貯蔵したものの方が、アクリルアミドは生成されやすいことになります。どんな調理法を選ぶにしても、冷蔵庫などでの貯蔵・保管は避けましょう。 もう一つは、100度を沸点とする水を介した調理法の蒸す、煮る、茹でる、を選ぶことです。メイラード反応の条件である120度以上の長時間加熱を避けることができます。 厚生労働省と農林水産省のサイトによると、実のところ、穀類を原材料とする焼き菓子や、製造工程に焙煎を含むコーヒー(特にインスタント)やほうじ茶、麦茶などの飲料にも、アクリルアミドは含まれていることが分かっています。自宅調理の場合も、野菜の素揚げや炒めもの、手作りの焼き菓子、トーストしたパャガイモを皆さんも日常的に食べていらっしゃることと思います。どのように調理していますか? 実は、焼いたり揚げたりで高温にすると、アクリルアミドという発がん物質が大量に生成されることが分かっています。2002年にスウェーデン政府が警告を出したのを皮切りに、世界各国で研究が進みました。 今回、それら様々な成果を総括した論文が発表されました。 論文では、アクリルアミド生成の詳しい仕組みも紹介されています。 ジャガイモは、アミノ酸の一種であるアスパラギンと、ブドウ糖や果糖などの還元糖を含みます。それぞれを単独で加熱しても問題は起きませんが、一緒にある時に120度以上で長時間加熱すると、「メイラード反応」と呼ばれジ第28回イモの冷蔵保管と高温調理は避けて内科医(ボストン在住)大西睦子120度以上がダメ8度以下もダメLOHASMEDICAL


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