ロハス・メディカルvol.112(2015年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年1月号です。


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単な話ではありません。日本では全体の病院数の8割、ベッド数の7割、救急医療受入数の6割を民間病院が担っています。このため、都道府県がベッド数を減らしたいと考えた場合、必ず民間病院に影響します。 何の補償もなく収入源となるベッドを減らされたら、民間病院は立ち行かなくなるかもしれません。ヘタに病床だけを動かそうとすると、地域医療の体制が崩れる可能性が高いのです。例えばドイツでは、各州政府がベッド数を決めていますが、病院の設備投資などハード面には補助金を出すという〝アメとムチ〟の関係をうまく保っています。日本でも財政支援が必要です。 私はこの財源として、今年度予算で新しく創設された、医療・介護サービスの提供体制改革のための基金を使えばよいと思っています。基金の原資は消費税増税分も含めて904億円が用意されていまていくことが必要です。 そのような住民本位の医療提供体制を構築するためのビジョンになるか、医療費抑制最優先のビジョンになるかは、今後の議論次第です。 ビジョン策定時に住民代表が加わることで、住民本位の体制をめざすことが可能です。高度急性期医療を受けられる回数と機会は減るかもしれませんが、必要なら必ず一度はアクセスできるように設計できます。 逆に、このまま私たちが何の手も打たず、ビジョンを都道府県だけでつくらせてしまうと、行政にとって都合の良い中央集権体制を敷かれ、乱暴なアクセス制限が行われる可能性があります。行政は、法令順守は得意ですが、地域や医療現場の事情を知りませんし、計画の実行や反省も得意ではありません。 そもそも病床数の設定は簡すが、金額をもう少し積み上げた上で、そういった使い方もしてほしいと思います。 時をほぼ同じくして、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」の議論も始まります。どういったものになるかは現時点で不明ですが、この制度が病床機能再編を後押しする可能性があります。 ただ、このホールディングカンパニー制も、うまく運用しなければ、単に行政から財政事情をチェックされて指導を受けるだけのようなことになりかねません。計画や制度がきちんと機能するものになるかは、私たちが見極めなければいけないのです。医療者もお上頼みではなく、地域の医療は自分たちの手で守るという意気込みで関わってもらいたいです。 例えば、これまでの行政施策はデータを元に議論していくというやり方ではなかったので、行政が各地域の高齢化率や疾病率のデータを示し、後は住民や医療者代表が具体的な医療提供体制を考えていくやり方もできると思います。 国民側も、このように医療政策が進んでいることを理解しておかなければいけません。限りある医療資源は国民の共有財産です。一人でも多くの人が適切な医療にアクセスできるよう、ベッドを譲り合う考え方の普及も求められます。現状を知らないまま、「病院から見捨てられた」といった感情が残るのも悲しいことです。 この策定作業は15年4月から都道府県で始まります。ぜひ経過を見ていただきたいと思います。首長や自治体議員の選挙があるなら、どう考えているかも質問してもらいたいです。この地域医療ビジョンは、医療者や国民が参加して地域の医療を作っていけるかどうかの試金石になると思っています。提供主体も変化行政に任せるなLOHASMEDICALVIEW31LOHASMEDICAL


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