ロハス・メディカルvol.113(2015年2月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年2月号です。


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は言います。 ビームの軌道は電磁石の磁力によって制御されます。磁力は、電流の大きさで制御されます。電流が安定しないと、出てくるビームの軌道も安定しません。一方で電流には、出現の仕方を予測できないけれど突発的な凸凹が必ず生じるという現実もありました。この凸凹をノイズと呼びます。HIMACのシンクロトロンでは、そのノイズの大きさが、それまでの100分の1以下になりました。だから、いきなりビームが安定したというのです。 独自の電源とは、後年「対称3線方式」と呼ばれるようになったもので、詳しくは次回に説明します。 ただし、スンナリと導入されたものではありませんでした。佐藤氏は、こんな文章を残しています。︱︱困ったのは、メーカーのD社の取り組みであった。「対称3線方式」の電源の製作経験が皆無であったこともあり、当初、この方式は拒否された。そう言えば、筆者はそれまでサイリスタ電源※製作の経験は皆無であり、それに加えて、筆者の紙と鉛筆での計算だけが「対称3線方式」の根拠であるから、無理もない話であった。(アルス文庫『シンクロトロンでは電源良ければ全て良し』より) 世界のどこの施設にも採用されていない魔訶不思議な回路を、その種の電源製作経験を持たない人間が、で行ったのだそうです。シンクロトロンを造り上げた佐藤氏は、治療開始の直後に大阪大学核物理研究センター教授として転籍しましたので、「性能仕様外し」は誰にも明かされぬままで、当然のことながら『放医研50年史』にも一言も出てきません。記されているのは「作業量と人員の多い第2研究室の打ち合わせ会議は長時間かかるのが常態であり、しばしば深夜におよんだが、室長の佐藤健次の指揮のもと室員は懸命に設計・製作作業に従事した」という佐藤氏のモーレツぶりをうかがわせる記述だけです。 佐藤氏は「科学や技術は、すべて予測可能なものと考えられがちで、設計や製作に当たっては計算できるものと考えるのが常識のようです。しかし、計算に必要な理論が知られていない時には、性能仕様を外すことがあってもよいのだと思います」と振り返ります。「理論が知られていない」というのは、ノイズ発生を予測できる数式がなかったことを指しており、この約20年後の2009年に理論が発見・論文発表されたため、こんな表現になっています。拒否され性能仕様外す手で計算した結果を元に造れと言ってくるわけですから、メーカーの担当者も困ったことでしょう。︱︱しかし、計算はそれなりに進展し、筆者は、この方式以外にはノイズ削減を実現する方法はないと言う思いが募った。(中略)そこで、性能仕様を外し、電気的構造仕様のみで、製作を依頼したが、それに至るまでには、数カ月を要した。ところが、現場への納品直前の社内の試験で、D社始まって以来の高性能で、大幅にノイズが削減出来たとのことであった。(同) 性能仕様を外したということは、必要な性能を満たさないものが納入されても文句は言えないということになります。それを上司の平尾泰男部長(後の所長)にも諮らず、独断LOHASMEDICALVIEW※交流を直流に変換(整流と言います)する際に、サイリスタというトランジスタの一種を利用する直流電源。7LOHASMEDICAL


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