ロハス・メディカルvol.113(2015年2月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年2月号です。


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第17回状態にある患者が、本人の意思に基づいて、ただ死期を引き延ばすためだけの延命措置を断わり、自然の経過として受け入れる死のことです。「自然死」という言い方もできるでしょう。一方、「安楽死」は不治で末期状態にある患者に、本人の意思に基づいて、医師が薬物を投与するなどして患者の死期を早めることです。「尊厳死」との違いを明確にするため、「積極的安楽死」という言い方もします。日本では刑法上の殺人罪に当たります。 先日、脳腫瘍と診断された29歳のアメリカ人女性が、医師から処方された薬を飲んで自ら命を絶ったことが大きく報道され、日本でも「尊厳死」や「安楽死」の話題が盛り上がりました。死について公に語ることをタブー視する風潮のある日本で、話し合うきっかけになったことはよかったですが、報道には明らかに間違っている点がありました。厳密に言えば、彼女の死は「尊厳死」でも「安楽死」でもなく自殺です。 「尊厳死」とは、不治で末期 これに照らせば、彼女の死が尊厳死と違うことは分かると思います。死期直前でなかったため安楽死とも違います。脳腫瘍という病気に絶望した自殺と言う他ないでしょう。アメリカの保険制度を考えれば、緩和ケアを受けるために高額の自己負担が必要だったのかもしれませんし、緩和ケアについて主治医との間で意思疎通できていたかどうかも疑問に感じています。 私は、同様の事案は日本では起こりにくいだろうと感じました。国民皆保険制度の下、痛みや苦痛を緩和する医療を受けられるからです。日本の医療技術と人材があれば、苦痛を避けたいという理由での自殺は起こりにくいと思うのです。とはいえ、彼女の投げかけは、日本人にも重要な意味を持ちました。もう少し尊厳死について考えてみます。うめむら・さとし●内科医。前参院議員、元厚生労働大臣政務官。1975年、大阪府堺市生まれ。2001年、大阪大学医学部卒業。終末期患者さんの死における医師の免責等が定められた「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」(いわゆる「尊厳死法案」)が国会に提出されようとしていました。在宅医療の割合が増えていくこれからの時代、患者が穏やかに最期を迎えるため、必要な医療を受けることと穏やかな死を迎えることは患者の権利であると謳う別の新しい法律が必要と考えます。在宅医療が広がる時代に新しい終末期の法律を尊厳死法案の背景LOHASMEDICALVIEW 正直に申し上げると、これまでの日本では、尊厳死(自然死)が本人と家族、医療者の間の『阿あ吽うんの呼吸』で、自然に行われていました。 例えば、終末期で既に意識はなく、生命維持装置を着け、衰弱も激しい患者がいて、家族から『苦しませないで最期を迎えさせてほしい』という要望があったとします。すると、医療者はカンファレンスで話し合い、家族から延命医療を希望しない旨の書面をもらい、死期を延ばすだけの医LOHASMEDICAL


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