ロハス・メディカルvol.113(2015年2月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年2月号です。


>> P.26

LOHASMEDICALVIEWれまで20年の仕事で経験した印象的な事例をご紹介します。<事例1> 亀田総合病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)になりたての頃、脳卒中で寝たきりになった64歳の夫の介護相談に医療相談室を訪れた初老の女性に(介護保険創設以前でしたので)「老人日常生活用具給付」という制度で、所得に応じた自己負担で介護ベッドの給付が受けられることを説明し、市役所の窓口を紹介しました。 しかし、病院や役場にもバスやタクシーを乗り継いで行かねばならない女性が、市役所の窓口に辿り着いた時、担当者は、本人の年齢といつから寝たきりになったのかだけを尋ね「○○市では介護ベッドの給付は在宅で6カ月以上寝たきりの65歳以上の人が対象です」と、対応を打ち切ったのです。 女性からの悔しげな電話で、そのことを知った私は担当者に電話し、「老人福祉法の対象はおおむね65歳以上となっており、64歳が対象から外されるのはおかしい」「麻痺は重度でおおよそ改善は望めないものであり、経済的に余裕のないこの家に介護ベッドの給付は不可欠である」「在宅で6カ月以上寝たきりを放置していたら床ずれだらけになってしまう」と何度も力説しましたが、「規則ですから」の一言と4月だというのに「制度としてはありますが、今年度はもう予算がありません。亀田病院のソーシャルワーカーに福祉予算が食い潰されてしまいます!」と、取りつく島さえありませんでした。 女性が相談にいらしたあの時、「何で直接福祉課職員に連絡し、事前に交渉しなかったのだろう」と後悔の念が津波のように襲ってきました。<事例2> 10年ほど前、老人施設で相談員として勤務していた時のことです。こちらも脳卒中で片麻痺の車いすのご婦人でしたが、居室でこっそり声をかけられました。戦死したご主人が潜水艦に乗っていらしたそうで、白い軍服のセピア色こ亀田総合病院・地域医療学講座タテ割りの福祉から脱却有償ワンストップ相談を9安房地域医療センター安房地域総合相談センター・センター長/千葉県中核地域生活支援センターひだまり・センター長香田道丸26LOHASMEDICAL


<< | < | > | >>