ロハス・メディカルvol.114(2015年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年3月号です。


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患者の生活の質は、ホームヘルパー(右上)の関わりで変わる(画像を一部加工してあります)LOHASMEDICALVIEW病で人工呼吸器を着けている場合、認知症で問題行動がひどくコントロールの難しい場合、もしくは家族全体が不安定になり何らかの密な介入が必要な場合など、医師の介入が有効な場合はあります。しかし、他の職種と密に連携すれば医師が行わなければならないことは多くありません。むしろ、医師は他の職種の能力を高めたり、全体をコーディネートしたりという役割を求められているのではないかと考えます。 一方、一般的な慢性期の在宅療養において、現実的に最も力が必要とされる職種は、間違いなく介護職です。 在宅での代表的な介護職には二つの職種があります。ホームヘルパーとケアマネジャーです。 この写真でお嫁さんのように見える女性はホームヘルパーです。老々介護のご夫婦のお宅に朝7時から出向いて、2人の生活を支えています。実際の生活の質はホームルパーの質によって大きく左右されます。例えば、食事や、排泄、清潔を保つことなどです。ホームヘルパーは、常に利用者の近くにいて最も数多く利用者と接する職業です。日常の様子をよく分かっており、変化に気づきやすいという意味でも家族と同様です。 一方、ケアマネジャーは信頼できる助言者であり、時にはキーパーソンにもなり得ます。彼らは、本人や介護者の本当の希望を引き出し、それに沿って介護を構築するという重大な役割を担っています。ですから、ケアマネの質や倫理観は在宅療養にとっては極めて重要だと言えるでしょう。 ただ、現状は、特に都市部のケアマネの中には自分たちの事業所のサービスを提供することを是とし、タダのセールスマンとなっている場合も少なくありません。極端な言い方をすれば、友人が狭い知識の中で、これがいい、と信じている健康食品を勧めて、勧められた方は言われるままに買ってしまう、さらにはノルマがあって、確信犯として勧めている、というのに似た状況が見え隠れするのです。 では、訪問看護師はどのような位置にあるのでしょうか。不安定な疾患を抱えた療養者にとってはこの上なく重要な職種です。訪問看護師は場合によっては週に3回程度訪問し、生活の安定を図ります。24時間対応で様々な相談にも乗り、場合によっては真夜中にも出向いて行って利用者の安定を図ります。もちろん、医師や介護職、家族と協働で様々なことをするのですが、在宅という療養の場においては医師よりもはるかに重要な役割を担っています。 在宅医療の現場には、多くの職種が関わります。それらの職種が患者さんの幸せを願って同じ目的へ協働するという環境をどのように創りだすのか、が最も難しく重要な作業になります。 この作業では、お互いに価値観の違いや能力の違いを認め合った上で、その力を統合していくことが必要です。地域包括ケアの要はこのことに尽きると思うのです。医師や行政など力の強い立場にいればいるほど、そのことを強く意識する必要があるのではないでしょうか。実力の必要な介護職全員が力を合わせる27LOHASMEDICAL


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