ロハス・メディカルvol.116(2015年5月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年5月号です。


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LOHASMEDICALVIEWる時、外来に来たお年寄りが「私食べるほど薬を飲んでいるんです」と、おっしゃいます。彼女は、16種類の薬を二つのクリニックからもらっていました。降圧剤2種類、胃蠕ぜんどう動改善薬、下剤2種類、筋緊張緩和剤、鎮痛剤、消化性潰瘍治療薬、高脂血症治療薬、健胃消化剤、ビタミンB12、ビタミンB1、骨粗鬆症治療薬、カルシウム剤、ビタミンD製剤、抗アレルギー薬です。 正直、こうして並べると、そんなに必要なの? と多くの人が思うでしょう。しかし、こういった処方を受けている高齢者は少なくありません。野本らが日本の中規模病院で後期高齢者の処方を検討した2011年の論文では、約20%が10種類以上の処方を受けていました。これは、日本に限ったことではなく、2010年のスウェーデンの論文でも、10種類以上の薬剤を飲んでいる80歳以上の方の割合は人口ベースで14%以上でした。 さて、はじめの症例に戻りましょう。この処方を見ると、おおよそどんなことがその患者さんと主治医の間に起きたのか予想がつきますし、恐らく効果の評価がなされていないであろうこともよく分かります。 多分、こんな具合なのでしょう。肩が凝るんです、と言われ、鎮痛剤と筋緊張緩和剤、鎮痛剤の副作用防止のための消化性潰瘍治療薬、さらに手がしびれる、ということで、ビタミンB12、だるいというのでビタミンB1、腰が痛いと言ったので、骨粗鬆症治療薬+カルシウム剤+ビタミンD。高血圧があったので、降圧剤2種類、かゆみか鼻水でアレルギーかもと抗アレルギー剤というところでしょうか。もちろん、下剤は希望通りお年寄りには出さないといけません。外来は時間がないので、カルテにはDITTOもしくはDO(いずれも同前の意)と書くだけ。もちろん処方箋は以前のコピーにサインのみです。実は、処方の見直しなど全くしていない可能性があるのです。 はっきり言えば、この方のあ亀田総合病院・地域医療学講座医者の出す薬は効くのか?多剤投与の害悪12北里大学病院トータルサポートセンター長小野沢滋効くのか怪しい2LOHASMEDICAL


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