ロハス・メディカルvol.117(2015年6月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年6月号です。


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※この記事は、医療ガバナンス学会発行のメールマガジンMRIC 2015年VOL.059 藤岡将『新しい専門医制度で得する人、損する人』(HTTP://MEDG.JP/MT/?P=3250)を元に作成しました。LOHASMEDICALVIEW 皆さんは「専門医」の文字から、どのようなイメージを思い浮かべますか?●「専門医」という免許(=ライセンス)がある。●その免許は、医師免許に上乗せの資格である。●その免許は、取るのが難しい。●その免許を得ると、(外科医なら例えば)難しい手術を実施することが許される。 こんなことを思っていませんか? これら実は、ほとんど間違っています。 まず、「専門医」という免許があるわけではありません。国家資格ではありませんし、「専門医以外は○○をしてはダメ」という公的な規制があるわけでもありません。 医師免許に上乗せされる公的資格としては、母体保護法指定医師(この指定を受けていない医師は人工妊娠中絶を行ってはいけない。母体保護法14条1項)と、精神保健指定医(この指定を受けていない医師は、精神疾患の患者さん本人の意思に反して入院させることなどができない。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律18条1項)が有名です。そういうものとは違うわけです。 現時点で、専門医の称号は、それぞれの分野の医師たちで構成された学会が、審査・発行しています。専門医取得の難易度や要件も、学会ごとに異なります。 社会や業界でどの程度信用されるかという違いはあるにせよ、学会は私的団体(会社やNPO法人などと同じ)なので、誰でも自由に設立し、専門医の称号を発行することができます。 つまり専門医は、「ライセンス」ではなく、例えばTOEFLや簿記検定のような、個人の能力を測るために広く使われている認定テスト、といったイメージがより正確なのです。 ただし、歴史と信用のある学会が発行する専門医の称号に限って言えば、「A医師は専門医、ということは、○○できる技量は備わっているだろう」という推定は当たっていて、「医師の能力を担保するため、専門医しか採用しない」「専門医を持っていないと○○をしてはダメという院内ルールを設ける」などといった運用を行っている病院はあります。 したがって、多くの医師は専門医の称号を取得します。専門医の制度変更医師大移動を招く?専門医は民間資格この春医師になった人たちが2年間の初期研修を終えて就職先を探す時、現在の先輩たちとは違う病院を選ばざるを得なくなるかもしれません。病院によっては医師不足に悩まされる可能性があります。専門医の制度が変わるからです。


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