ロハス・メディカルvol.117(2015年6月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年6月号です。


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おおにし・むつこ●医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて基礎研究に従事。LOHASMEDICALVIEWいと、全身の細胞で酸素が足りなくなり、疲れや虚弱感、仕事や学校での能力低下、体温維持の困難、免疫力の低下など症状が現れます。近年、若年層の精神障害増加や認知機能低下にも関係あるのでないか、と関心を集めています。しかも本人の健康に悪いだけでなく、妊娠した場合には、低体重児出産や早産、つまり胎児の健康を損なうリスクが上がります。 ヘモグロビンは、鉄を含む「ヘム」という赤い色素とタンパク質が結合して出来ています。限界まで鉄が減ると、ヘモグロビンを作ることができなくなります。そんなことにならないよう、体内にはフェリチンなどの「貯蔵鉄」が肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられています。通常、体内の鉄は再利用されますが、食事からの摂取不足や吸収障害、成長や妊娠による需要の増加、月経や消化管出血などがあると減少してしまいます。 世界保健機関(WHO)では、一般女性で12・0G/出㎗未満、胎児に栄養を奪われる妊婦で11・0G/㎗未満を貧血と定めています。 日本でも、健康な女性1万3000人以上を対象とした2006年の調査で、50歳未満の日本人女性の22・3%はヘモグロビン値が12G/㎗未満だったことが報告されています。全く他人事ではないのです。 この問題は成長期で鉄の需要が高い子どもや若者に、より深刻です。きちんと食事をしないと、すぐ鉄の供給が追い付かなくなるからです。 ところが、この時期、友人や仲間の影響で食習慣の変化することが珍しくありません。それもバランス良く変化するよりは、不適切なメディア情報にあおられて、バランス悪く変わります。フランスの法案で問題とされたような極端ァッションの国フランスで先日、「痩せ過ぎ」モデル禁止法案が可決されたこと、ご存じでしょうか。BMIが18未満のモデルの雇用などを禁じ、違反すると最大7万5千ユーロ(約970万円)の罰金や最大6カ月の禁固刑が科されるものです。ファッション業界は猛反発しているそうですが、この法案の目的は、モデル自身の健康が損なわれないことと同時に、痩せ過ぎの体に対して若い女性が憧れを抱いて過剰なダイエットを行わないようすることです。 過剰なダイエットによる痩せ過ぎの健康への悪影響は様々ですが、先進国の若い女性に限って言えば、鉄欠乏性貧血が最も深刻な問題です。 鉄欠乏性貧血は、血液中のヘモグロビン値が正常よりも少ない状態です。酸素の運搬役であるヘモグロビンが少なフ第33回痩せ過ぎは不健康貧血リスク上がる内科医(ボストン在住)大西睦子メディアの悪影響胎児にも悪影響


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