ロハス・メディカルvol.119(2015年8月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年8月号です。


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1.15〜1.251.25〜1.05〜1.150.95〜1.050.85〜0.95〜0.85[図5]都道府県別1人あたり実績医療費(全国=1)(後期高齢者医療制度)医療機関が潰れるということも滅多に起きません。むしろ医療資源の多い地域は、スタッフの配置に余裕があり、競争も適度にある分、医療の質が高くなったりします。一方の医療資源の少ない地域では医療提供側は目の前のことに精一杯、受ける側も選択の余地がないことから、質がきちんと保たれるのか怪しいものがあります。 若年層が現在の高齢者の医療費を負担することに積極的なメリットを見いだせるとすれば、どんどん地域の医療の質が高まって、将来自分たちの受ける時に恩恵があるということぐらいのはず。質の担保すら危うい、この不公平は深刻です。 なぜ西日本の方が医療資源は豊かかと言えば、昔からそうだからとしか表現しようがありません。国民皆保険制度の下で、格差は是正されることなく続いてきました。現状の制度は、医療資源の豊富な地域とそうでない地域との格差を縮める効果はなく、むしろ拡大させてきたのです。 この対人口比で医療資源が少ないという東日本が抱える弱点は、今はまだ首都圏などの人口構成が若いため、社会問題となっていませんが、現状のまま推移すると、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には大変な医療供給不足となって社会問題化することが予測されます。医療を受けたくても供給がないという可能性すらあり、そうなれば「お金がなくて受けられないのを防ぐ」という保険成立の前提が根底から覆ります。 そんな恐ろしい事態を未然に防ぐためにも、医療資源の偏り是正をめざして、1人あたり医療給付費と診療報酬との関係を見直し、全国均一の診療報酬はやめて(診療報酬点数は一律のまま、1点あたりの金額に差を付ければ技術的に難しくありません)、供給の少ない地域へ医療供給者が移動するよう促すべきではないでしょうか。 さて、先ほどから、過剰な医療を抑制し、費用負担者の利益を守る仕組みがない、と繰り返し述べてきました。本LOHASMEDICALVIEW来、費用負担者の代弁と利益擁護は、健康保険組合など保険者の仕事です。しかしこれまで、その機能は、ほとんど有名無実でした。 ついに、それでは済まされない時代が到来し、厚労省は保険者に対して新たな役割を与えることにしました。 次回は、この新しい役割について解説します。首都圏に迫る危機5


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