ロハス・メディカルvol.121(2015年10月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年10月号です。


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8冊を3回に分けて学ぶ。講義内容は、●第1回:治療に関する情報や見通しの整理、就業規則、社内制度、産業医について。働くことへの希望や想いについて。●第2回:休職中の過ごし方と利用できる制度。働き方、働き場所の変更と情報開示、仕事の価値観など。●第3回:雇用に関わる労働条件、労働法の考え方。がん患者を対象に、就労規則や制度、社会保険などの知識を提供し、患者同士で問題点を共有し、患者の問題解決能力やコミュニケーション能力を高めようとめざします。2カ月に1度募集をかけ、応募した6名程度の患者と、就労に関する専門家が、週1回1時間の全3回、病院の一室に集います。毎回、専用のテキスト(写真)を使って就労に必要な知識を身に着け、「履歴書に病気のことを書くべきなのか」といった細かい事柄についても、専門家から適宜アドバイスが入ります。 さらに患者同士で、抱える問題や悩みを共有します。 「例えば、病気や病名について上司には報告したけれど、周りの人に伝えられない、という悩みはよく聞きます。どうして言えないのか、どうすればよいのかは人により様々ですが、参加者同士が自分のケースを紹介して話し合う中で、解決策を見つける人は多いです」と橋本久美子看護師。 発案者である同科の山内英子部長は、「乳がんは特に働き盛りの患者さんも多く、医療者は就労についての悩みのボールを拾い上げても、抱えきれずにいました。そこで当院がん相談支援室の橋本看護師に相談し、ボールを投げる先として『就職リング』を提案しました」と話します。 開始から3年で、のべ1 2 0人以上の患者が参加しました。近頃は乳がんだけでなく子宮がん、肺がんや大腸がんの男性患者など、参加者が幅広くなっています。3回の活動修了後も参加者同士の交流は続き、近況を知らせてくれる患者もいるそうです。 山内部長と橋本看護師は2013年から、就労リングを運営できるファシリテーターの養成講座も開いており(次項コラム参照)、その修了生によって各地の病院でも就労リングが立ち上がり始めています。4年にまとめられた厚労省『がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会報告書』では、がん拠点病院に対し、「社会保険労務士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント等」や「地域の就労における専門家やハローワーク関係者」と連携した、がん患者・経験者の就労に関する相談体制の構築を求めています。 「相談体制」の先駆例と言えるのが、2012年に先の厚労省研究班の試みとして聖路加国際病院で始まった「就労リング」です。それまでは精神腫瘍科で行われていたグループ療法を応用し、同病院乳腺外科で考案されました。社会保険労務士(社労士)や産業カウンセラーなど就労に関する専門家が病院に入り込む、新たな就労支援モデルです。 就労に関する悩みを抱える就労リングのテキスト5新たな支援モデル


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