ロハス・メディカルvol.121(2015年10月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年10月号です。


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はしもと・くみこ●1996年より聖路加国際病院に勤務、2008年より相談支援センター所属。2013年に産業カウンセラーを取得し、H24・25年度厚労科研費補助金(がん臨床研究事業)山内班において「就労リング」開発に従事。現在も病院内で開催中。やまうち・えいこ●1987年、順天堂大学医学部卒業。聖路加国際病院外科を経て1994年渡米。ハーバード大学などを経て2009年帰国、聖路加病院乳腺外科医長。2010年より現職兼ブレストセンター長。米国外科学集中治療専門医、米国外科認定医。「就労リング」開発に従事。現在も病院内で開催中。社会へ戻れるんです」と山内部長は話します。 聖路加国際病院では、ファシリテーターである橋本看護師とソーシャルワーカーの他に毎回、働く現場をよく知る産業カウンセラーが1人、法律や制度のプロである社労士が2人、ハローワーク職員も1人参加して就労リングを開催してきました。最近になって経済的な相談に対応できるファイナンシャルプランナーも1人加わりました。 しかし、こうした専門家の就労リングへの参加に関しては、熱意のある人たちが意気に感じて取り組んでいるとはいえ、将来にわたってずっと 続けられるかに関しては不安が残ります。 各病院に配置されている就労の専門家自体に関しても、山内部長は「例えば社労士の相談料は本来なら1時間1万円近くが相場ですから、厚労省が予算を打ち切ってしまったら、各病院で雇い続けるのは不可能です」と指摘します。医療行為として診療報酬を付けるというのも、あまり現実的とは思えません。 このため山内部長たちは、就労支援の仕組みを経済的に自立させられないか模索しています。注目しているのは、特典でセカンドオピニオンが付いてくる民間の医療保険で、同じように就労リングを組み込めば保険の魅力アップにつながるのでないかと考えています。 就労リングの価値を実感しているからこそ、公的助成に期待するだけの受身の姿勢ではなく、社会にその価値を訴え、広い支援を得ようとしているのです。感じ方が変わる人も多いのだそうです。 「専門家との個別相談では患者さんは自分のことしか見えないままですが、就労リングでは『みんなも頑張ってる』『みんなが自分を心配してくれている』という気づきや、『自分が人にアドバイスできている、役に立てている』という自覚を得られて、自分の存在価値を再発見できます。そうして自信を取り戻し、自分だけの世界から抜け出して 年に1回、社労士、産業カウンセラー、ハローワーク職員など就労の専門家と医療関係者を対象に開催されています。2013年は約100名、2014年は約90名が参加しました。講座では、医療関係者は就労について、就労の専門家は医療についてそれぞれ学んだ後、患者の心とグループ療法について精神腫瘍科の医師から講義を受け、さらに各専門家と医療者の混成グループによる実践的ワークショップを行います。ファシリテーター養成講座左/がん相談支援室アシスタントナースマネージャー右/乳腺外科部長橋本久美子山内英子7経済的自立をめざす


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