ロハス・メディカルvol.121(2015年10月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年10月号です。


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おおにし・むつこ●医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて基礎研究に従事。LOHASMEDICALVIEWえ運動で水分が失われがちなところに、追い打ちをかけるのです。体が正しく機能するには、電解質が体内で適正なバランスを保っている必要があるのに、脱水によって影響を受けてしまいます。 2点目。アルコールには食欲増進作用があります。お酒を飲むと、味付けの濃い、高カロリーなものが食べたくなる、という方も多いですよね。しかもアルコールは、ビタミンB1やB12、葉酸、亜鉛といった、重要なビタミン・ミネラルの吸収を妨げる一方、そのカロリーは筋肉で使えない質の低いものです。 3点目。飲酒は運動の疲れを癒すとの妄想がありますが、実際には脱水が正常な睡眠のリズムを乱し、睡眠周期を妨害すると科学的に実証されています。就寝前に飲酒すると、本来は一定周期で見られるはずの「レム睡眠」、つまり身体は眠っているのに脳は活動している浅い眠りの状態が損なわれます。レム睡眠は、記憶の整理に不可欠とされています。翌日への充電に必要な深い眠りも充分得ることができません。この睡眠不足で、ヒト成長ホルモンの分泌が、通常量の70%程度まで減る可能性もあります。一晩にビール中ジョッキ3杯、日本酒なら2合強以上飲むと、脳と体に3日間影響し、それを2日間続けると5日間影響します。飲酒後48時間は注意力の欠如が見られます。この他、アルコールは気道周りの筋肉を弛緩させ、気道を狭くしてしまうため、いびきを悪化させます。 最後の4点目は、運動した効果を台無しにするということです。ヒト成長ホルモンは、筋肉の合成と修復プロセスの一部も担っています。その分泌が妨げられることで、筋肉の損傷やケガの回復が妨害され、筋肉の増強も妨げられまく運動すること、適量のアルコールを摂取することは、健康的なライフスタイルとして知られています。では、運動後に飲酒するのは、どうでしょうか? どうやら、この組み合わせは、あまり勧められないことのようです。 米ノートルダム大学はW E Bサイトで、アルコールによる以下4点の影響について、学生に注意を促しています。●脱水から様々な不快な症状をひき起こす。●栄養バランスが乱れ、持久力低下の原因になる。●睡眠障害を招く。●トレーニング後の筋肉の合成を妨げる。 まず1点目。アルコールは、血液中の抗利尿ホルモンの分泌を抑制する作用があります。そのため、摂取した水分以上に体から水分が奪われ、脱水をひき起こします。ただでさよ第37回体を鍛えるならお酒は控えよう内科医(ボストン在住)大西睦子つの悪影響筋肉の回復が落ちる18


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