ロハス・メディカルvol.121(2015年10月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年10月号です。


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グは解消しません。ラグを減らすことが主目的なら、混合診療解禁より、承認と保険適用を早く、と主張すべきなのです。 一方の解禁反対派は、混合診療を解禁すると、新しい治療法に健康保険が適用されないようになって、富裕層しか最先端の医療にアクセスできなくなると主張します。これも同じように、新しい治療法に早く保険適用を、と主張すべきなのであって、混合診療禁止とは直接関係のない話です。 このように、本来は保険適用するかしないかの方で扱うべき話を混合診療と絡めて議論してきた結果、混合診療禁止の対象となる「自由診療」は保険が適用されていないもの、保険診療への上乗せ部分、という暗黙の了解というか誤解が生じてしまったのです。 でも、そもそも保険診療との併用を禁止しなければならない「自由診療」は、それと提供を完全に禁止した場合、現状を考えるとたしかに大混乱が起こると予測されます。しかし、それを認める理屈が、手順を踏むか踏まないかという形式論で示されたことは、ある意味大きな発見でした。私は、混合診療禁止には、もっと合理的な理由があり、そこから考えると今回のような併用を取り締まることには、あまり意味がないと考えています。 この回答の背景には、混合診療解禁を巡って賛成派と反対派の間で行われてきた神学論争が横たわっています。 解禁賛成派は、混合診療禁止によってドラッグラグやデバイスラグが発生していると主張します。しかし、それらの薬や機器を保険医療機関で自由診療として使えるようになったからといって、普通の人には手の届かない値段になるでしょうから、実質的なラは違うと思うのです。 国民皆保険が成立するまでは、医師または医療機関が個別に自らの医療行為の値段を決めていました。価格による競争もあったでしょう。 一方、国民皆保険の理念は、国民に等しく医療を保障するため、同一の医療行為には同一の診療報酬が支払われるというものです。診療報酬は、医療の質と供給を担保するための適正水準で設定されているという前提ですから、値引きが行われてしまっては、皆保険の理念がズタズタになります。 つまり、国民皆保険が始まった頃、保険診療で値引きさせないことには、重大な意味があったはずです。 値引きが行われるとしたら、保険適用された複数の医療行為のうち、どれかを「自由診療」扱いにするという手法が考えられました。例えば「当院の胃カメラは保険適用を外して自由診療としますから100円で受けられます。ただしそれ以外の診察料や処方箋料は保険適用します」という手法です。 そういう集患目的・利潤目的の恣意的な保険外しを禁止した。それが「混合診療禁止」の最初だと思います。 保険適用されていないものの上乗せ併用を禁止するという趣旨ではなかったはずなのです。先ほども書いたように、上乗せを認めることと、医療の質や供給が損なわれることは直接関係ないからです。もちろん最近は怪しい自由診療行為も散見されますので注意が必要ですが、それは別途、保険ルール以外での取り締まりが必要だと思います。 行政当局には、国民の生命と日本の医療を守るため、本当は何を規制しなければならないのか、改めて考え、意味のある取り締まりをしていただきたいと願います。過去の議論が神学論争ダンピングが規制対象LOHASMEDICALVIEW27LOHASMEDICAL


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