ロハス・メディカルvol.121(2015年10月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年10月号です。


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体というものは、自分の体の中だけで作られるものですよね」と尋ねられたことがあります。その時はアレルギー反応の話をしていたので、「そうです。私たちの体の中で作られます」と即答しました。しかし、どうも話が噛み合わないので、よくよく聴いてみると、その人は抗体医薬という言葉を知り、その薬に対して疑問を持ったので質問されたのでした。 となると、答え方が違ってきます。バイオテクノロジーが進歩して、「自分の」体以外でも作られるようになったことをお話しすべきでした。抗体医薬は、自分の体の外(製薬会社)で作られた抗体です。その抗体を薬として、体内に入れます。具体的な薬品名で言うと、アバスチンやハーセプチン、アクテムラ、レミケードなどです。 ご質問をいただいたことで、医療関係者が気づかないうちに、一般の人へ誤解を与えて何らかの異物(抗原)が体の中に入ってきた時に、その抗原に対して抗体が作られ、抗原と抗体がくっ付いて(抗原抗体反応といいます)、異物を排除するということを学んでいます。 学校で免疫の仕組みを教わらなかった世代の人も、ワクチンなどの経験から抗体という言葉は知っており、感染症から身を守るために必要なもの、と理解されているようです。いるのかもしれないと思うようになりました。 抗体という言葉は、義務教育では保健の中学の教科書に出てきます。感染症の予防について学習する時に、体を守る仕組みとして紹介されています。理科では高校の生物で初めて学習します。 どちらの教科においても、免疫の仕組みとして、 つまり、多くの人が、抗体という言葉を聞くと、「元々は体の中にない異物」を「排除する」ため「自分の体の中だけで作られるもの」という印象をお持ちなのです。 そのため、抗体医薬という新しい用語を聞いた時、自分が知っている「抗体」という言葉から連想して間違った解釈をしてしまう人もいらっしゃいます。その医薬品が体の中に入ることで、体内で抗体が作られ、作られた抗体が病気をやっつけてくれる、というような誤解です。 抗体とは、抗原に「特異的」に結び付くもののことですが、抗原が、体の中に存在しなかった異物であるとは限りません。タンパク質や糖鎖など様々なものがあり、既に体の中にある場合もあります。 「特異的」というのは、1種類の抗体は、ある特定の1種類の抗原にしかくっ付かない「抗LOHASMEDICALVIEW薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰吉田のりまき都道府県が設置する教科書センター一覧は、文部科学省のサイトに掲載されています。HTTP://WWW.MEXT.GO.JP/A_MENU/SHOTOU/KYOUKASHO/CENTER.HTM教科書をご覧になりたい方へ第6回抗体を体内に入れる正しく理解しよう28抗原に付くもの抗体が薬になる


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