ロハス・メディカルvol.122(2015年11月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年11月号です。


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LOHASMEDICALVIEWした場合には、1個の施設で治療できる患者の数は、重粒子線と陽子線とで大きな差が出ることになります。つまり、重粒子線は患者を増やして費用を安くすることが可能、陽子線では難しい、のです。 大阪府では、現在の1人あたり平均照射回数(陽子線20回、重粒子線11回)で年240日を1日8時間、9割稼働するとして、陽子線だと最大年650人、重粒子線だと最大年1400人強を治療できると想定しています。患者数さえ充分なら、重粒子線の方は1人150万円へと半額以下に値下げしても年21億円と採算ラインを超えます。陽子線は2 5 0万円まで下げるのがやっとです。 現在の施設数を前提にする限り、捌ききれないほどの潜在的需要があることは、本誌連載最終回でも説明しました。もし1人あたり照射回数が8回まで減れば、あるいは施設の稼働量を25%程度増やせば、1  0万円を切れる計算です。ここまでくれば他の治療法に費用対効果でも負けないはずなので、健康保険を適用してしまって患者を増やし価格を下げる方向へと舵を切る手だってあるはずです。 なぜ、費用対効果が云々という話になっている時に、こんな重大な事実が無視されているのでしょうか。 医師が必ずしも放射線治療に詳しいとは限らないので、先進医療会議の委員たちが知らなかったということは充分に考えられます。しかし、放射線腫瘍学会の構成員たちが知らないはずはありません。敢えて言わないようにしていると見るべきでしょう。 この学会の不可解な動きの背景として指摘しないわけにいかないのが、重粒子線治療を推進してきたのは旧科学技術庁(現文部科学省)所管の放医研で、対して我が国で最初に病院附属の陽子線治療施設を設けたのは旧厚生省(現厚労省)所管の国立がんセンター東病院だったという、省庁縦割りの弊害です。先進医療会議を開催しているのも、そこで健康保険適用の可否を判断しているのも厚労省です。 1992年に米国が重粒子線の研究を中止して陽子線に絞ったという経緯もあって、厚労省と医療界の主流派たちは「米国でさえ成果を出せなかった重粒子線の研究など予算のムダ」と捉え、本命は陽子線、重粒子線は脇役という考えに凝り固まっていたと思われます。そして、陽子線が重粒子線を上回る結果を出していたならば、スンナリ陽子線だけ健康保険適用まで行ったのでないかと考えられます。しかし残念ながら厚労省と主流派たちは、明らかに判断を間違えました。 重粒子線は生き残るのに陽子線は残らないという事態を避けるために、沈まばもろともということでしょうか。あるいは、そのうち米国が重粒子線で結果を出してくれるだろうし、その時には今回の議論を誰も覚えていないだろうから、それを待って普及させればいいやということでしょうか。 大きな可能性を秘めている重粒子線治療の脚を縛って、陽子線治療と一緒くたに扱おうとする理由が、他に思いつきません。 きちんと2種類を分けた上で、患者・国民の立場に立って議論することを強く望みます。大事なのはメンツ28LOHASMEDICAL


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