ロハス・メディカルvol.124(2016年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年1月号です。


>> P.27

 困ったことに現時点では、効くか効かないか事前に見極めることができず、しかも効いているのか効いていないのか短期間での判定も難しいようです。また効いた人が途中で投与をやめたらどうなるのか分かっていません。効く人には劇的に効くという薬の性格上、とりあえず猫も杓子も延々と使い続けるという状況になりかねず、下手するとニボルマブだけで年に兆単位の請求が健康保険へ回る可能性もあります。現在の薬剤費が全体で約10兆円ですから、そんなものを払い続けられるはずがありません。 何も対策をせず、漫然とニボルマブの承認と保険適用が広がるのを待っていたら、国全体が沈没します。 健康保険から何かを切り離して身軽にするしか康保険が適用されており、高額療養費制度の対象になるので、70歳未満の患者の自己負担は最高(高給取り)でも年200万円ちょっと、標準報酬月額が50万円以下の人なら年65万円ちょっとです。高齢者や、もっと所得が低い人なら、さらに自己負担は減ります。差額は、すべて健康保険で面倒をみることになります。その財源は、健康な現役世代の人たちや企業が納める保険料、そして赤字国債などで工面される公費です。 悪性黒色腫は患者数があまり多くないので、今はまだ、この薬のために健康保険財政が破綻するというような話にはなっていません。しかし早ければ2015年のうちにも一部の肺がんに対して承認が下り、健康保険も適用されるようになるのでないかと見られています。こうなると対象患者数が爆発的に増えます。さらに他のがんでも承認と保険適用が続くことでしょう。ありません。 しかし、これが絶対に正しいという選択肢はありません。立場によって正解が異なります。 かつて私が政治家として、治療の値付けの問題に向き合った際は、費用対効果を評価するかどうかだけで大揉めに揉め、やっと2015年に入ってから中医協を舞台に、どうやって評価するのかという議論が始まったばかりです。 しかし時代は、はるかに先へ行ってしまいました。 国民皆保険は、誰のどのようなリスクに対して、どの程度の負担で、どの程度の面倒をみるべきなのか、抜本的な組み換えが避けられません。そして、それは医療界や製薬業界などの内輪だけで決めてよいことではなく、国民一人ひとりの納得が必要です。 そういう時代になったのだということを理解し、健康保険についての関心を高めていただければ幸いです。選択が必要LOHASMEDICALVIEWバックナンバーの電子書籍をWEBで公開中!!HTTP://LOHASMEDICAL.JP定期購読できます。27©ロハスメディア2016(無断転載禁止)〒107-0062東京都港区南青山2-2-15 ウイン青山616 株式会社ロハスメディア内 ☎03-5771-0073「ロハス・メディカル」編集部:ARTDIRECTION&DESIGN:HOSOYAMADADESIGNOFFICEPRINTEDINJAPAN 株式会社テンプリント読みやすい大きな活字。購読・登録でTポイントたまります。HTTP://MAINICHI.JP/お問い合わせは0120-460-012毎日新聞はロハス・メディカルを応援します!32頁版本誌を、毎月1冊1年間2500円(税・送料込み)、毎月5冊1年間5000円(税・送料込み)で定期購読できます。郵便振替 00150-7-668818 (株)ロハスメディア振替用紙の記入欄に、住所・氏名・電話番号を忘れず書いて、ご入金ください。WEBサイトからもご注文を承っています。ロハス(LOHAS)は、LIFESTYLESOFHEALTHANDSUSTAINABILITYの頭文字からできた言葉です。直訳すると「健康的で持続可能な生活様式」となります。


<< | < | > | >>