ロハス・メディカルvol.124(2016年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年1月号です。


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第28回うです。 この薬が生まれるきっかけになった原理や分子は、本庶佑・京都大学名誉教授の教室で発見されたもので、本庶名誉教授がノーベル賞の有力候補に躍り出るなど、日本の知的貢献が世界中に大きな希望を与えているという意味では大変に喜ばしいことです。 同様の仕組みで効く薬の研究開発競争が世界中で始まっていて、間もなく似たような効果の薬が大量に登場してくるでしょう。人類が、がんで死ななくなる時代も遠くはないのかもしれません。 しかし何事にも光と影があ 免疫チェックポイント阻害剤という種類の抗体医薬(特にPD-1抗体のニボルマブ)が世界中で大きな話題になっています。他に治療法がなく死を待つばかりだった悪性黒色腫患者の2〜3割に劇的な効果を見せ、中には治ったのでないかと見られる人まで出てきたこと、肺や腎臓など他のがんでも同じ程度の割合の患者に良好な成績が出ていること、他の療法と組み合わせると効く人の割合をさらに増やせる可能性もあることなどが理由です。今までの抗がん剤とは、「効く」次元の違う薬であることは確かのよります。 この薬が扉を開いた世界によって、我が国の国民皆保険制度は現在の形のまま持続することが不可能になりました。こんな薬が出てくることを、我が国の国民皆保険制度は想定していなかったからです。 このPD-1抗体、日本の大手製薬企業はどこも製品化に乗り出さず、唯一手を挙げた中堅の小野薬品も単独では製品化することができなかったため、開発のほとんどは権利を譲り受けた米国のメガファーマ、ブリストル・マイヤーズスクイブの手によって行われました。 全く新しい仕組みの薬の製品化という極めてリスクの高いことに、多額の投資を行った経営判断は称賛に値します。そして、これ1個の成功の陰に、その何十倍、何百倍もの失敗が隠れているはうめむら・さとし●内科医。前参院議員、元厚生労働大臣政務官。1975年、大阪府堺市生まれ。2001年、大阪大学医学部卒業。劇的によく効くのだけれど、とてつもなく高額という薬が登場しました。今後も続々と出てくるはずです。これによって国民皆保険制度は抜本的な組み直しを迫られています。国民全体による議論と納得が必要です。劇的に効く高額な薬の登場で国民皆保険は大きな転換点にとにかく高いLOHASMEDICALVIEWずです。ただ、成功したからには、失敗した分まで含めた過去の投資分を何倍にもして回収するのが当然という肉食系資本主義の論理で値づけが行われた結果、とんでもなく高額になっています。 この薬は体重1㎏あたり2㎎を3週間に1回投与することになっていて、その薬価が100㎎約73万円、20㎎だと約15万円です。体重60㎏の人なら1回120㎎ですから約88万円。1年間投与が続いたら約1500万円になります。 普通の人が自費で投与を受けるのは不可能な金額ですが、既に悪性黒色腫については健26


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