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015年に日本膵臓学会が『患者さんのための膵がん診療ガイドラインの解説』を出版しました。それによると、膵がんの年間死亡数は3万人を超え、死亡順位は肝がんを抜いて第4位になったとのことです。治せるがんが増えた現在でも、早期発見が困難で、5年生存率も極めて低くなっているのが現状です。 なぜ膵がんは早期発見が難しいのでしょうか。 消化について、小学理科、中学理科、そして高校生物で学習します。口、食道、胃、(十二指腸を含む)小腸、大腸、肛門といった一連の消化管の図は、多くの方がしっかり記憶しています。また、膵臓から出された膵液が十二指腸に流れ込む、ということは皆さん大抵ご存じです。 しかしなぜか、膵臓がどこにあって、どういう形をしてとが一緒に示された図が少ないように思われます。一緒に描かれていたとしても模式図で、両者の位置が少々ずらされていることがありました。これは致し方ないですね。平面的に示しづらいですよね。詳しく描けば描くほど臓器同士が重なって分かりづらくなり、かえって子どもたちの理解を妨げてしまう恐れがあります。高校で生物を選択すれば詳細を学習できますが、学習する機会がなかった大人たいるのかを記憶している方は、多くないのです。 実は膵臓は胃の裏にあり、洋ナシのような形をしています。その膨らんだ方が十二指腸に接していて、ちょうど湾曲した所にはまり込んでいます。 そう言われてみれば分かるはずなのに、なぜ皆さん記憶していないのだろうと不思議に思って教科書を見てみると、小学校や中学校では胃と膵臓ちは、自分の記憶図に膵臓をぜひ加えておいてください。 さて、膵臓には、管がたくさんあります。 まずは膵管という管が挙げられます。膵液(消化を助けます)は膵管を通って十二指腸に分泌(外分泌)されます。また、インスリンやグルカゴンといった血糖を調整するホルモンが膵臓内のランゲルハンス島で産生され、血液中に分泌(内分泌)されます。このように、膵臓には外分泌と内分泌の両方の働きがあり、血管もたくさん存在します。 さらに肝臓で排出された胆汁が通る管もあります。主膵管と呼ばれる膵管と総胆管とが合流し、十二指腸に胆汁が排出されるのです。 膵がんは、治療が困難で、転移・再発しやすいがんです。先ほど膵臓は管が多いと書きましたが、これはがんがその場に留まらず移動しやすいこLOHASMEDICALVIEW薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰吉田のりまき都道府県が設置する教科書センター一覧は、文部科学省のサイトに掲載されています。HTTP://WWW.MEXT.GO.JP/A_MENU/SHOTOU/KYOUKASHO/CENTER.HTM教科書をご覧になりたい方へ第11回膵がん発見が難しい理由10胃の裏にある手遅れになりがち