ロハス・メディカルvol.126(2016年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年3月号です。


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LOHASMEDICALVIEW11月号で「がん重粒子線治療」が患者に縁遠い存在になってしまうかもしれないという記事を書き、その後『がん重粒子線治療のナゾ』(大和出版)を出版し重ねて警鐘を鳴らしました。幸いなことに、ことし1月の厚労省・先進医療会議の結果、少なくとも今後2年間は現在とそんなに変わらない扱いとなりそうです。ホっがん重粒子線治療先進医療に残った合研究所(放医研)のH I M ACで治療が開始され、既に20年以上の実績があります。放医研に先立って1957年から35年間も研究してきた米国勢がギブアップしたということもあって、技術・ノウハウ共に日本が世界を圧倒的にリードしています。 20年以上の実績があって世界をリードしているのですから、もっと国民に存在を知られていてよいはずなのですが、開発が決まった際の経緯から医療界では日陰者扱いを受けてきており、2003年に高度先進医療として1人3 14万円で混合診療の提供が認められてからダラダラと10年以上も健康保険適用に至らず、その知名度は決して高いと言えません。途中2012年の段階では、専門家が一部がんへの保険適用を求めたのに対して、費用対効果を見るべきと厚労省が退けています。 保険適用を退けた理由が費用対効果だった以上、値付けの妥当性と、効果の両方を見る必要があるはずなのに、なぜか前者の検討は全く行われず、厚労省から後者について検討するようゲタを預けられた日本放射線腫瘍学会が2 015年8月、一部のがんを除き既存治療法への優位性を示せなかったと報告します。そして、希望する患者の大多数が受けられる先進医療Aで治療を続ける限り既存治療法と比較するようなデータの取得は困難だとして、患者の条件を厳密に定める先進医療Bへと「格下げ」を提案したことから、今回の騒動が始まりました。学会が提案したという形を取ってはいるものの、そのように仕向けたのは厚労省です。 これにビックリしたのが、放医研に続いて炭素イオン線施設を整備してきた兵庫、群馬、佐賀や整備途上の神奈川、大阪、山形にある各機関で、「格下げ」になると治療患者数が劇的に減って施設存亡の危機に陥ると予測されたことから、水面下で様々な動きが本誌編集発行人 川口恭んの重粒子線(炭素イオン線)治療に関しては2014年5月号から1年連載をしましたので、詳しくは過去の誌面(『ロハス・メディカル』のWEBサイトで電子書籍を読めます)か『がん重粒子線治療のナゾ』をお読みいただきたいのですが、その特徴を一言で表現すると、精密で強い「〝神の手〟に代わる究極の低侵襲治療」(外科医出身の土屋了介・元国立がんセンター中央病院院長)ということになります。 1994年に放射線医学総が28ビックリの格下げ提案


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