ロハス・メディカルvol.127(2016年4月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年4月号です。


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全国平均であって、地域差が考慮されていないからだ。 ここでいう地域差とは、市区町村ごとの歯科医師数の割合である。歯科は疾患によって患者が流動的になることは少ない。簡単に治るむし歯の治療や、毎月のクリーニングにわざわざ遠くの大学病院に行く患者はわずかだ。口腔癌や、難しい親不知の抜歯などで、生活圏の違う医療機関を受診する患者は全体の1割にも満たない。したがって歯科治療を受診する上で指標となるのは日本全体の歯科医師数ではなく、市区町村レベルの歯科医師数の割合となる。 関東を例にとると、一番歯科医師が多い地区は千代田区だ。人口10万人あたりの歯科医師数は3104・5人で、全国平均の38倍以上。歯科大が2つあり、多数の勤務医が在籍しているためだが、住民32人に1人の割合で歯科医師がいることになる。大きな交差点で信号待ちをしていたら、LOHASMEDICALVIEW1人くらいは歯科医師が混ざっているといった感じだろう。千葉市美浜区の321・4人、横浜市鶴見区の206・9人などと、歯科大がある地域はすべて高値だ。 これらと周辺の地区で激しい競争にさらされる歯科医師は、生き残るため様々な過剰サービスを実施している。他院から患者を奪うため、初診患者を紹介したら、自院独自のポイントで優遇したり、若いママさんたちのためベビーシッターを雇用したり、治療中にリフレクソロジーするなど、本来の歯科治療から逸脱し、歯科医師法に抵触する疑いのあるようなものまで横行している。 これらのサービスを、歯科の低い診療報酬では賄えない。そのため、歯科医師は保険治療を敬遠し自費治療に患者を誘導しようと躍起になる。当然前述のような根管治療など極力避けるようになる。この流れは本来の正当な歯科治療を歪めている。 歯科大がある地区では、今も歯科医師が年々増加しており、さらにサービス過剰となっていくと推測できる。 過剰と分かっているのに、なぜそこに集まるのかと、疑問に思うかもしれない。しかし、世界的に歯科医は、人口が多く、文化水準が高く、高所得者が多い地区に集まるというデータがある。日本も一部の地域を除き、同様の傾向を示す。歯科医の多くは、高所得者地区の出身であり、その地区に自然回帰しがちだ。また、人口が多く高所得者が多ければ、自費診療の患者も見込める。大都市には技術に習得に必要な環境も整っており、多少のステータスもあるのかもしれない。 競争が激しくなればなるほど、市場原理が働く。そのため資金力のある大手の歯科医院が出現し、小口の小歯科医院は淘汰される可能性もある。大手歯科医院はさらなるサービスを展開するだろう。サービス先行となった場合、保険治療は金にならないため蔑ろにされかねない。都心の住民は、金がないと歯科医師に嫌われ満足な治療を受けられなくなるかもしれない。 もっと深刻な問題の起きる可能性があるのは、人口は多いが歯科医師数が少ない地区だ。前述の通り、歯科医師は人口の多い地区に集まる傾向にあるが、人口が多いのに歯科医師数が少ない地区が一部に存在する。顕著な地区として、埼玉県川口市(人口58万1千人)の60・9人、相模原市中央区(人口26万7千人)の52・4人など、O E CD諸国平均より低い。このように人口は多いが歯科医師数が少ない地区は関東に多くあ28金儲け主義に走る過密地区の歯科医普通の治療が夢過少地区の将来


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