ロハス・メディカルvol.135(2016年12月号)

ロハス・メディカル2016年12月号です。リン酸探検隊パン花粉症の舌下免疫療法、睡眠と性差、頭を使って空腹の時はトレーニングを、有酸素運動と血管内皮の機能の関係、カルシウムサプリの心臓への悪影響、予防接種って何なの3、オプジーボの光と影7など


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 QALYは、QUALITYADJUSTEDLIFEYEARS(質調整生存年)の略語。生存期間を単なる長さだけでなく、その期間のQOLを現す効用値で重みづけしたもの。効用値は、完全な健康を1、死亡を0とし、その間の数値で現す。0.6の健康状態で3年生存すると、そのQALYは3×0.6=1.8となる。治療の効果をQALYで表す場合、図のように治療で得られるQALYから、その治療を行わなかった場合のQALYを引き算した斜線分の面積で示される。 ICERは、INCREMENTALCOST-EFFECTIVENESSRATIO(増分費用対効果)の略。既存治療に対して1QALY上乗せするのに必要な費用のことを指す。QALYとICERQALYの概念図LOHASMEDICALVIEWなら素晴らしいことです。 ただ私には、そう思えなかったので、癌学会での話も、そんな内容になりました。 オプジーボが切り開いた地平から、この先、がんに対する「良い薬」が続々と登場してくることは間違いないと考えています。 よって、私が主に危惧するのは、それらの「良い薬」がきちんと患者の元に届くのか、世界中の人が恩恵に浴せるのかの方です。 これから出て来るものについて、我が国はドラッグ・ラグに悩まされるか、高値で売り付けられるかする可能性が高いということは、この連載の3回目(7月号、WEBで電子書籍を読めます)で指摘しました。 ただ、それ以前の問題として、実は今ある薬ですら既に黄信号が点灯しています。 今年になって複数の医療関係者から、化学療法を受ける肺がん患者が、職務には問題のない能力と健康状態なのに、職場で肩たたきに遭ったり、あるいは再就職できなかったりしており、健康保険組合による高額な薬剤費負担が原因になっているようだ、との話を耳にしました。 がん患者の就労を後押ししようという時代の流れに逆行している、ケシカランと皆さの1程度になりそうだという情報をお伝えしました。その情報を調べて発表した全国保険医団体連合会(保団連)が推定の一つの根拠にしていたのが、1QALY得る(コラム参照)ために払ってもよい費用(ICERと呼びます)の上限を3万ポンド(約390万円)程度に定め、保険償還を推奨するかしないか無慈悲なまでに線引きしてきたNICEの実績です。 原則として自己負担なく医療を受けられる英国の患者からすると、NICEの存在は薬へのアクセスの障害でしかありません。それが社会から支持されているのは、費用対効果を客観的に評価することによって、費用負担者である健康な国民の利益をも代弁しているからと考えられます。 我が国でも、一般国民は薬既に危険水域ん思ったかもしれませんが、会社側がそうするよう追い込まれている理由まで考え始めると、大変深遠な話になります。 前回(11月号)、英国NICE(国立医療技術評価機構)とメーカーとの間でオプジーボの英国での非小細胞肺がんへの保険償還について交渉が行われていて、償還されるなら、その価格は日本の10分27新薬治療によるQOL時間既存薬治療によるQOL10QOL新薬治療で上乗せされるQALY


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