ロハス・メディカルvol.136(2017年1月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2017年1月号です。


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LOHASMEDICALVIEW発に成功する確率が低くなったとか何だとか、もっともらしい説明が色々されています。それも一面では事実なのでしょう。しかし私から見れば、一番大事な事実が、恐らく意識的に端折られています。 それは、医薬品開発はリターンの良い投資だと多くの投資家に考えられており、大量の資金が製薬企業に流れ込んでいるということです(株価が上がるって、そういうことです)。 その開発には当然ながら成功の何倍も失敗があるわけで、資金の総額に対して期待された通りの利子を付ける(株価の上昇と言い換えても結構です)ためには、成功した薬を高く売らねばならない、という極めてシンプルな理屈になります。 つまり、成功確率が低いから高くなるのではなく、成功確率が低くても割に合うよう高く売っているし売れる、そういう特殊な市場なのだと説明する方が適切です。 投資効果を高めるには、値段を高くするだけでなく成功確率を上げるという方向もあり、その模索ももちろん業界で行われているはずですが、オプジーボと競合品の開発競争が「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」のトンデモない状況になっているというのは、本連載の3回目(電子書籍をWEBで読めます)で説明しました。 ちょっと考えれば分かるように、モノの実質的(相対的)な値段が、需要側の懐事情に関係なく上がり続けることなどあり得ません。もし上がり続けると業界内の人間が考えているとしたなら、それは要するにバブル酔いの幻覚です。 業界メディアであるミクスオンラインの報道によると、塩野義製薬の手代木功社長は、10月31日の記者会見で「イノベーションだから高い薬価で当然だろうということに対して、社会が〝ノー〟と言い始めている」と述べたそうで、慧けいがん眼だと思います。 ただ困ったことに、薬の値段が高くても売れると信じる投資家が一定以上存在する限り、高く薬を売るのを躊躇するなど株価が下がるようなスキを見せた会社は買収されてしまうのも現実で、製薬業界の人たちが自発的に軌道修正するのは相当難しそうです。 このように考えてくると、健康な人たちが薬に高い値段を払うのは、将来の自分のためどころか、むしろバブルを長期化させて自分の首を絞めるだけで何も良いことがないとは思わないでしょうか? 日本の不動産バブルが日銀の総量規制で一気に終焉を迎えたように、多くの先進国で薬には費用対効果に見合う金額しか払わないという意思決定がされたなら、このバブルは一気に終わります。少なくとも日本は、降り時ではないでしょうか。 そんなことをしたら画期的な新薬が生まれなくなるじゃないかという懸念に関しては、その心配をする前に、もっとマズい流れが現在進行中で、そっちの手当てが先だということ次回説明します。高い薬価を許容するのは自分たちの首を絞めるだけ※全産業平均を1とした場合の主な産業の生産波及効果((I-AD)-1型・統合中分類の影響力係数小数点下4ケタを四捨五入)は、「食料品」1.124、「繊維工業製品」1.018、「印刷・製版・製本」1.014、「無機化学工業製品」1.049、「有機化学工業製品(除・石油化学基礎製品)」1.208、「医薬品」1.051、「鋼材」1.492、「乗用車」1.576、「公共事業」1.013、「医療」0.894、「保健衛生」0.801、「社会保険・社会福祉」0.799、「介護」0.73631


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